市民講座 I ホワイトデーに贈る恋の歌〜6世紀の時を駆け抜けて〜が行われました

2025年3月14日(金)15:00より、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターは、(一社)ミュージックプロデュースMHKSと共催で、音楽に関する市民講座を開催いたしました。市民講座においては、音楽研究の専門家の宮崎晴代先生をお招きし、6世紀にわたる恋の歌をテーマにしたご講演と、バロック音楽のミニコンサートを実施し、参加者の皆様にお楽しみいただきました。今後もこのような音楽の市民講座を開催し、大学と市民の交流を図る活動を継続していきます。



▲ 宮崎晴代講師(中世・ルネサンス音楽学者)による講座



▲ 満員の会場の様子



▲ ミニコンサート(左から 田中孝子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、八巻梓(スピネット)、我妻万希子(メゾソプラノ))


音楽セッションが脳と心の健康に与える効果を検証 〜グループでの楽器演奏活動が健康寿命延伸に寄与の可能性〜(東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター:瀧 靖之教授)

【発表のポイント】
⚫ 健常高齢者を対象に、グループ音楽セッション(楽器バンド演奏)の介入を実施することにより、脳の健康(全般的な認知機能・言語性記憶(注1))と心の健康(気分状態)が改善することを確認しました。
⚫ 楽器未経験の高齢者のグループ音楽セッション参加が認知・心理機能への効果をもたらすことが明らかになりました。健康寿命延伸への寄与の可能性をする成果です。

【概要】
 世界的な高齢化の進行とともに、認知症やメンタルヘルスの問題が社会的課題となっています。認知症を予防する方法の一つとして、音楽活動が挙げられます。今までの研究において楽器演奏が認知・心理機能への効果が明らかになっていましたが、楽器未経験の健常高齢者におけるグループ音楽セッションの効果についてはこれまで十分な研究が行われていませんでした。
 東北大学と株式会社池部楽器店は共同研究を行い、楽器未経験の健常高齢者を 16 週間、グループ音楽セッションに参加するグループと参加しないグループに分けて介入を実施したときの認知・心理機能への影響を調査しました。その結果、全般的な認知機能(MMSE スコア)、言語性記憶(WMS-LMⅡ スコア)、気分状態(POMS2:活気・活力スコア)が介入群において有意に改善しました (p<0.05)。
 本研究結果は、グループ音楽セッションが健常高齢者の脳と心の健康の維持・向上に貢献する可能性を示唆しており、今後の効果的な認知症予防、健康寿命延伸のプログラム開発に期待がもたれます。
 本成果は、2025 年 2 月 10 日に科学雑誌 Frontiers in Aging にオンライン掲載されました。


図 1.
(A)グループ音楽セッション群における MMSE の改善
介入の前後(Pre-Post)において、全般的認知機能の指標である MMSE のスコアが有意に改善した。MMSE のスコアが高いほど認知機能が高いことを示す。
(B)グループ音楽セッション群における WMS-LMⅡ の改善
介入の前後(Pre-Post)において、言語性記憶の指標である WMS-LMⅡ のスコアが有意に改善した。WMS-LMⅡの スコアが高いほど認知機能が高いことを示す。
(C) グループ音楽セッション群における POMS2(活気 – 活力)の改善
介入の前後(Pre-Post)において、気分状態の活気と活力の指標である POMS2 の Vigor-Activity スコアが有意に改善した。活気 – 活力のスコアが高いほど活気・活力の気分状態が良いことを示す。

【用語説明】
注1. 耳で聞いた情報を記憶しておくこと: (言語性記憶)

詳細(プレスリリース本文)

【問い合せ先】
<研究に関すること>
東北大学
スマート・エイジング学際重点研究センター
教授 瀧 靖之
助手 品田 貴光
TEL:022-717-8582
E-mail:nmr_office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

学際ハブ領域展開プログラム第二回シンポジウムならびにサテライトシンポジウムが開催されました

2025年2月27-28日の日程で、学際ハブ領域展開プログラムの第二回シンポジウムならびにサテライトシンポジウム「学際ハブが実現する新しいがん悪液質研究」が行われました。学際ハブは金沢大学がん進展制御研究所、大阪大学微生物病研究所、慶應義塾大学先端生命科学研究所、東北大学加齢医学研究所からなる共同事業で、金沢大学がん進展制御研究所が牽引しています。癌・老化・炎症・代謝がキーワードで、今回は、加齢医学研究所がシンポジウム開催を取り仕切りました (写真1)。

2月27日は第二回シンポジウム「健康寿命の延伸に向けた集合知プラットフォームの形成」を開催しました。本学杉本亜砂子理事および加齢医学研究所 田中耕三所長のopening remarks (写真2) でスタートしたシンポジウムは、多様性に富む12名の講演者の先生がたによって大きく盛り上がりました。

▲ 写真1 会場のスマート・エイジング棟国際会議室
▲ 写真2 加齢医学研究所 田中耕三所長の開会の挨拶

最初のセッションは老化&代謝がトピックで、加齢研 佐藤准教授が座長を務め、大阪大学微生物病研究所の石谷太教授のご発表によって幕を開けました。石谷太教授によるキルフィッシュのお話、慶應義塾大学曽我朋義教授のよる代謝解析のご講演、東北大学医学系研究科村上昌平助教による超硫黄分子と筋肉の関係に関するご講演、大阪大学微生物病研究所高倉伸幸教授による血管内皮幹細胞のお話は、いずれも極めて興味深く、質疑の時間が足りないほどでした (写真3) 。休憩時間は加齢研名物の「齋藤さんのコーヒー」や喜久福の大福などが振る舞われました (写真4)。

▲ 写真3 (上段左から)石谷太教授、曽我朋義教授 (下段左から)村上昌平助教、高倉伸幸教授
▲ 写真4 休憩時間の様子

第二セッションはがんに関する研究を中心に、加齢研 千葉教授が座長を務めました。金沢大学がん進展制御研究所の後藤典子教授による乳がん幹細胞のご講演に始まり、同研究所 大島浩子准教授による胃がんの肝臓転移の機構に関するお話、九州大学菊繁吉謙講師先生による慢性骨髄性白血病における代謝制御に関するご発表、加齢医学研究所 田中耕三所長によるがん細胞の染色体異常に関するお話の4件でした(写真5)。

第三セッションはショートトークで、座長は加齢研 瀧教授が務めました。大阪大学微生物病研究所の金森茜特任研究員による細胞外小胞のお話、金沢大学がん進展制御研究所の福田康二助教によるKRAS変異がんのWee1依存性に関するご発表、慶應義塾大学先端生命科学研究所のJiayue Yang特任助教による腸内細菌のお話、そして加齢医学研究所竹本あゆみ助教による社会的な孤独やアバターに関する発表が続きました。学際ハブの多様性が詰まったようなセッションで、議論が大いに盛り上がりました(写真6)。

▲ 写真5 (上段左から)後藤典子教授 、大島浩子准教授 (下段左から)菊繁吉謙講師、田中耕三教授
▲ 写真6 (上段左から)金森茜特任助教、福田康二助教 (下段左から)Jiayue Yang特任助教、竹本あゆみ助教

セッション終了後は金沢大学がん進展制御研究所鈴木健之所長のお話があり、本領域のロゴマークや今後についてのお話がありました。その後、シンポジウム会場であるスマートエイジング研究棟で懇親会が開かれ、学際ハブの今後についての議論に花が咲きました(写真7)。

2月28日はサテライトシンポジウム「学際ハブが実現する新しいがん悪液質研究」が開催されました。学際ハブをきっかけとして4研究所を中心にした新しいがん悪液質研究を推進しようという狙いで、学際ハブ内外から第一線で活躍されている先生がたを招聘しました。

第一セッションは加齢研 魏教授が座長を務め、同研究所 河岡准教授が趣旨説明と問題提起をいたしました。続いて愛知県がんセンターの青木正博分野長によるがん個体の肝臓に対するマルチオミクス解析、金沢大学がん進展制御研究所平尾淳教授によるニコチンアミド代謝を狙った新規計測技術のお話が続きました。第二セッションは加齢研 河岡准教授が座長を務め、大阪大学微生物病研究所高倉伸幸教授 (2日連続のご講演!!) による血管をターゲットにした悪液質制御のご発表、京都府立医科大学髙山浩一教授によるがん悪液質治療の最前線に関するお話、最後に国立がんセンターの光永修一医長によるがん悪液質のトランスレーショナル研究に関するご講演でした。高山浩一教授と光永修一医長はがん悪液質に関する臨床研究の最前線にいらっしゃり、臨床・基礎の両方の先生がたが議論し合う素晴らしいセッションとなりました (写真8)。最後のディスカッションセッションではそれぞれの先生がたがセッションを総括するコメントを出され、実りある議論がなされました。

▲ 写真7 第一日目終業後の懇親会
▲ 写真8 (上段左から)青木正博分野長、平尾淳教授 (下段左から)高倉伸幸教授、高山浩一教授、光永修一医長

学際ハブの今後にとって非常に重要なシンポジウムになりました。
加齢研まで足を運んで下さった先生がた、どうもありがとうございました。
次は9月に金沢で行われる癌学会を場に再集結することを楽しみにしております。

シンポジウムオーガナイザー・教授 魏范研、准教授 河岡慎平

アバターによる保険相談がコンサルタントの体内に与える影響に関する研究を開始いたしました(東北大学加齢医学研究所:生体情報解析分野:河岡慎平 准教授)

【発表のポイント】
⚫ 株式会社国際電気通信基礎術研究所(以下、「ATR」)、国立大学法人東北大学(以下、「東北大学」)および株式会社アドバンスクリエイト(以下、「アドバンスクリエイト」。東証プライム・福証・札証、証券コード:8798)は、アバターによる保険相談がオペレーター(コンサルタント)の体内に与える影響に関する研究(以下、「本研究」)を開始いたしましたので、お知らせいたします。
⚫ コンサルタントが、オンライン保険相談においてアバターを用いることにより、体内にどのような影響を受けるのかを血液検査を含めて調査いたします。
⚫ 本研究によって、アバターに対するコンサルタントの適性を多角的に明らかにし、その知見をもとに適性に合わせたアバアターや生成 AI を活用する仕組みを提供することを目指します。

【本研究の概要】
 アドバンスクリエイトのコンサルタントの中から、本研究に協力するコンサルタントを募り、実際にお客さまとオンライン保険相談を行っているときのコンサルタントの生体影響を調査いたします(図1)。具体的には、オンライン保険相談対応中の脈拍の計測や、その前後に採血やアンケート等を行い、アバター使用時、アバター不使用時で、どのような変化が見られるかについて多層的な調査を行います。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所
生体情報解析分野
准教授 河岡 慎平
TEL:022-717-8568
E-mail:shinpei.kawaoka.c1*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学加齢医学研究所
広報情報室
TEL: 022-717-8443
Email: ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

加齢研研究員会主催 医用細胞資源センター 松居靖之教授の退職記念講演(生命科学研究科共催)が行われました

令和7年2月21日(金)加齢医学研究所 スマート・エイジング研究棟 国際会議室および Web にて、医用細胞資源センター 松居靖久教授退職記念講演(生命科学研究科共催)「到達点の向こうに見えるもの」が行われました。講演では、松居靖久教授のこれまでの研究生活、またその変遷について貴重なお話がありました。



▲ これまでの研究についての解説



▲ 花束贈呈


方震宙助教(腫瘍生物学分野)が令和6年度東北医学会奨学賞(A)を受賞しました。

 方震宙助教は、「遺伝性腫瘍関連分子のユビキチン化による発がんメカニズムの解明」という研究主題目で、令和 6 年度東北医学会奨学賞(A)を受賞しました。
 東北医学会奨学賞は、東北医学会会員かつ東北大学大学院医学系研究科および加齢医学研究所の助教・医員並びに東北大学大学院医学系研究科大学院生で、学会や主要学術雑誌に学問的価値の高い研究を発表した者のうちから選考により贈られます。助教・医員を対象とした奨学賞(A)は方助教を含む 3 名が表彰され、2025 年 1 月 9 日に医学部 1 号館で授与式が行われました。

【詳細URL】
https://www.med.tohoku.ac.jp/enc/tohoku/

▲ 授賞式の様子

▲ 奨学賞

 

【問い合わせ先】
加齢医学研究所
腫瘍生物学分野 教授
千葉 奈津子 022-717-8477
E-mail; natsuko.chiba.c7*tohoku.ac.jp (*を@に変換してください)

がん細胞の染色体不安定性の一因を解明 〜がん細胞の動原体では繊維状コロナが減少している〜(東北大学加齢医学研究所:田中 耕三教授)

【発表のポイント】
⚫ 正常な細胞分裂では、染色体上の動原体(注1)と呼ばれる構造が、紡錘体(注2)を形成する微小管(注3)と結合して紡錘体極へと引っ張られます。その際、微小管と結合していない動原体の最外層に線維状コロナ(注4)が形成されます。
⚫ がん細胞では、細胞分裂期に染色体上の動原体の最外層に存在する繊維状コロナが、正常細胞と比較して減少していることがわかりました。
⚫ 繊維状コロナの減少により、がん細胞では動原体での微小管の形成が抑制されており、これが染色体不安定性(細胞分裂の際に染色体の分配異常が増加している状態)の一因となっていると考えられます。
⚫ 染色体不安定性は、がんの悪性化や薬剤耐性の原因であり、本研究成果は、がん細胞における染色体不安定性の発生機構の理解につながります。

【概要】
 多くのがん細胞では、染色体不安定性(細胞分裂の際に染色体の分配異常が増加している状態)が存在しており、がんの悪性化や薬剤耐性の原因になっています。しかし、その原因はよくわかっていません。
 東北大学加齢医学研究所・分子腫瘍学研究分野の家村顕自助教、田中耕三教授らの研究グループは、がん細胞では、細胞が分裂する際に、染色体上の動原体の最外層に形成される繊維状コロナと呼ばれる構造が減少していることを明らかにしました。繊維状コロナの減少により、がん細胞では、正常な染色体分配に寄与する動原体での微小管の形成が抑制されていました。このことは、繊維状コロナの減少が、がん細胞の染色体不安定性の一因である可能性を示唆しています。
 本研究成果は、11月28日に学術誌 Cancer Science 誌で発表されました。


図 がん細胞での繊維状コロナの減少と染色体不安定性
がん細胞では、Bub1 や CENP-E の動原体局在量の低下により、繊維状コロナが減少し、その結果動原体での微小管の形成が抑制されており、これが円滑で正確な染色体分配を妨げることにより、染色体不安定性が引き起こされている可能性がある。

【用語説明】
注 1. 動原体: 染色体上のセントロメア領域に形成される巨大なタンパク質複合体で、細胞分裂の際に微小管が結合する部位となる。
注 2. 紡錘体: 細胞分裂の際に微小管により形成される紡錘型の構造体であり、紡錘体の中央に整列した染色体を微小管によって両極に引っ張って分配するはたらきを持つ。
注 3. 微小管: 細胞骨格の一つで、チューブリンというタンパク質が重合して形成される管状の構造物。伸長と短縮を繰り返すことにより、細胞の運動や染色体分配を司る。
注 4. 線維状コロナ: 細胞が分裂する過程の初期に、紡錘体の微小管と結合していない動原体の最外層に形成されるシート状の構造物で、動原体が微小管と結合すると消失する。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合せ先】
<研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所
分子腫瘍学研究分野 教授 田中 耕三
TEL:022-717-8491
E-mail:kozo.tanaka.d2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

令和7年度東北大学加齢医学研究所共同利用・共同研究の公募について

東北大学加齢医学研究所では、加齢医学に関する共同利用・共同研究を行っております。
募集要項のとおり公募いたしますので、奮ってご応募ください。
 
【詳細URL】
https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/joint-program

【問い合わせ先】
加齢医学研究所 研究推進係 022-717-8445

GFAP 遺伝子の変異が認知症の発症に関わる大脳白質病変に影響 〜脳画像所見における遺伝的要素の新知見〜(スマート・エイジング学際重点研究センター:瀧 靖之教授)

【ポイント】
① MRI でみられる大脳白質病変は脳卒中や認知症の発症に関わる重要な所見ですが、アジア人における遺伝的要因は明らかになっていませんでした。
② 大規模認知症コホート研究である JPSC-AD 研究(※ 1)に参加した約 9,500 名の脳 MRI 検査とゲノム情報を用いて、大脳白質病変に関連する遺伝子領域を検討しました。
③ 東アジア人で比較的多くみられる GFAP 遺伝子の変異が大脳白質病変に関連していることを示し、さらにこれまで報告されていなかった新たな領域を 1 か所同定しました。

【研究の概要】
 大脳白質病変は脳 MRI 画像でよくみられる病変で、脳卒中や認知症の発症にかかわる重要な所見です。大脳白質病変は高血圧などの生活習慣病があると出現しやすいことが報告されていますが、遺伝的要因も関与することが知られています。これまでの研究で大脳白質病変に影響する遺伝要因が明らかにされてきましたが、アジア人を対象としたものは数百人程度での小規模な解析に限られていました。
 九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授、 病態機能内科学の古田芳彦助教、眼病態イメージング講座の秋山雅人講師、および弘前大学、岩手医科大学、金沢大学、慶應義塾大学、松江医療センター、愛媛大学、熊本大学、東北大学、理化学研究所生命医科学研究センターらの共同研究グループは、健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究:JPSC-AD 研究の参加者 9,479 人の脳 MRI 検査とゲノムデータを用いてゲノムワイド関連解析(Genome-Wide Association Study [GWAS(※ 2)])を行い、大脳白質病変容積に関連する遺伝子座を検索しました。その結果、大脳白質病変容積に関連する遺伝子座として 17 番染色体の GFAP 遺伝子の 295 番目のアミノ酸を変える変異を同定しました。さらに、英国の UK バイオバンク(※ 3)研究の GWAS データとの統合解析を実施した結果、20 か所の遺伝子座が大脳白質病変容積に関連しており、そのうち 6 番染色体(SLC2A12 遺伝子(※ 4))に存在する 1 か所の遺伝子座が新規の遺伝子座であることを明らかにしました。
 本研究成果は、2024 年 11 月 13 日午後 7 時(日本時間)に国際学術誌 npj Genomic Medicine オンライン版に掲載されます。

図:JPSC-AD と UK バイオバンクのゲノムワイド関連解析(GWAS)を統合した結果。
横軸は染色体上の位置、縦軸に関連の強さを表し、各点が変異を示している。緑色の点の集まりは今回初めて明らかになった遺伝子座(SLC2A12)を示している。

【用語解説】
※ 1 健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究:Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia(JPSC-AD)
我が国の 8 地域(青森県弘前市、岩手県矢巾町、石川県七尾市中島町、東京都荒川区、島根県海士町、愛媛県伊予市中山町、福岡県久山町、熊本県荒尾市)における地域高齢住民約1万人を対象とした大規模認知症コホート研究である(https://www.eph.med.kyushu-u.ac.jp/jpsc/)。
ベースライン調査は 2016 年-2018 年に実施され、予め 8 地域で標準化された研究計画に基づいて、詳細な臨床情報(認知機能を含む)、頭部 MRI 画像データ、遺伝子情報を収集している。さらに、認知症や心血管病の発症や死亡に関する追跡調査を継続している。

※ 2 ゲノムワイド関連解析:Genome-Wide Association Study(GWAS)
ヒトゲノムの全域に分布する遺伝的変異と、臨床検査値などの量的な形質や病気との因果関係を網羅的に検討する遺伝統計解析手法。これまでに、数百を超える形質や病気を対象に実施され、数多くの関連遺伝的変異が同定されている。

※ 3 UK バイオバンク
英国で行われている世界最大規模のバイオバンクで、約 50 万人の参加者を対象として、遺伝情報、疾患情報、血液などの多彩な情報・試料を収集している。情報は世界中の研究者に提供され、多数の研究結果が発表されている。

※ 4 SLC2A12遺伝子
細胞がブドウ糖などの糖を取り込むのを助ける GLUT12 と呼ばれるタンパク質をコードしている遺伝子。GLUT12 は脳内のアストロサイトに発現していることが示されている。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センター 教授 瀧靖之(タキ ヤスユキ)
TEL:022‐717‐8582
Mail:yasuyuki.taki.c7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 助教 舘脇康子(タテワキ ヤスコ)
TEL:022‐717-8559
Mail:yasuko.tatewaki.a7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学 加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
Mail:ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

【メディア出演情報】細田千尋 准教授が「TVシンポジウム」に出演します(11月16日(土))(東北大学大学院情報科学研究科 (兼)東北大学加齢医学研究所認知行動脳科学研究分野)

【メディア出演情報】 細田千尋 准教授が「TVシンポジウム」に出演します(11月16日(土))(東北大学大学院情報科学研究科 (兼)東北大学加齢医学研究所認知行動脳科学研究分野)

人間社会情報科学専攻 学習心理情報学分野 細田千尋准教授が、11月16日(土)14:00~14:59にEテレで放送される「TVシンポジウム」に出演します。ぜひご覧ください。

【番組情報】
Eテレ
番組名:「TVシンポジウム」
副題:「これで解消!睡眠の悩み」
11月16日(土)14:00~14:59
番組の紹介