新型コロナウイルス変異型は自然免疫を活性化する RNA 編集酵素による新型コロナウイルス進化の解明

新型コロナウイルス変異型は自然免疫を活性化する
RNA 編集酵素による新型コロナウイルス進化の解明

 東北大学加齢医学研究所 生体防御学分野 西井慧美助教、薬学研究科 小菅将斗大学院生らは、新型コロナウイルスのゲノム7804種類を解析したところ、新型コロナウイルスの遺伝子変異は、ウラシル(U)への点変異が突出して多いことを発見しました。この変異には特徴があり、ヒト由来のRNA編集酵素による変異が多いと考えられました。日本型を含む4種類の変異型ウイルスゲノムから変異部分を人工合成したRNAを用いて、ヒトマクロファージ細胞株に疑似感染させたところ、自然免疫を担う炎症性サイトカインの産生が増強しました。新型コロナウイルスは、ウイルスを排除しようとする生体防御機構を利用して変異を続けていると考えられます。本研究は、Scientific Reportsに掲載されました。

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詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
東北大学加齢医学研究所 生体防御学分野
担当 西井 慧美、小笠原 康悦
電話 022-717-8579
e-mail:immunobiology*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

新型コロナウイルス感染症対策共同研究・共同利用(第1回)シンポジウムの開催について(1st IDAC Symposium on COVID-19)

新型コロナウイルス感染症対策共同研究・共同利用(第1回)シンポジウムの開催について(1st IDAC Symposium on COVID-19)

開催日:令和2年10月 26日 (月) PM1:00~6:00

詳細は添付のプログラムをご覧頂ければと思います。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

プログラム

東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 技術補佐員(産休代替) 1名公募

東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 技術補佐員(産休代替) 1名公募

〇職務内容
・研究室における秘書的業務(教室内各種帳簿・資料の作成、管理。電話応対、来客応対、清掃、物品調達⼿続き、出張に関する書類作成、主催する研究会の運営補助など)

〇応募締切
令和 2 年 8月19⽇(水)(必着)

詳細は公募要項をクリックして下さい。

公募要項

履歴書(本学様式)

吉田肉腫細胞が重要科学技術史資料に登録

吉田肉腫細胞が重要科学技術史資料に登録
‐抗癌剤開発などの癌研究への寄与を評価-

【発表のポイント】
● 加齢医学研究所医用細胞資源センター細胞バンクが長年、保有、分譲している吉田肉腫細胞が、我が国の科学技術の発展を示す上で貴重な資料として、「国立科学博物館重要科学技術史資料」*1として選定、登録されました。
● 吉田肉腫細胞は、癌を細胞レベルで研究することを可能とし、抗癌薬の創製に使用されるなど、癌に対する化学療法の発展に大きな影響を与えたことが評価されました。

【概要】
加齢医学研究所医用細胞資源センター細胞バンクでは、ヒト癌細胞株などの研究に有用なさまざまな細胞株を、研究者に分譲する事業を行っています。今回、当センターが分譲中の吉田肉腫細胞が、我が国の科学技術の発展を示す上で貴重な資料として、「国立科学博物館重要科学技術史資料」として登録されました。
吉田肉腫は、腹水*2に浮遊状態で維持できる肉腫細胞*3です。吉田富三博士は、1932(昭和7)年に東京帝国大学医学部にて世界で初めて化学物質の経口投与によりラットの肝臓に癌が発生することを発見しました。さらに研究を続け、長崎医科大学にて1943(昭和18)年にラットの腹水中に浮遊する癌細胞株「吉田肉腫」を作りだし、別のラットの腹腔に注入することで、移植できることも発見しました。そして吉田博士は、1944年(昭和44年)に、東北帝国大学教授に就任しました。この吉田肉腫細胞を用いることで、癌を細胞レベルで研究することが可能になり、1952(昭和27)年に、我が国初めての抗癌薬ナイトロジェンマスタードN-オキシド(商品名:ナイトロミン)の創製に使用されるなど、癌に対する化学療法の発展に大きな影響を与えたことが評価され、今回の登録に至りました。

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図 吉田肉腫細胞株 YS-TC細胞の顕微鏡写真

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吉田肉腫細胞が重要科学技術史資料として登録されたことを示す登録証(左)と記念の楯(右)

【用語説明】
*1 国立科学博物館重要科学技術史資料
重要科学技術史資料は、「科学技術の発達上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの」や「国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えたもの」に該当する資料を、技術の歴史を未来に役立てる情報と研究の拠点を目指し活動している、独立行政法人国立科学博物館が選定、登録しています。

*2 腹水
腹腔内に存在する液体で、通常も少量ありますが、マウスやラットなどの実験動物の腹腔に、ある種の癌細胞を移植すると、増加した腹水内で癌細胞が増殖することが知られています。

*3 肉腫細胞
癌細胞の一種で、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管などの結合組織細胞に由来する癌細胞です。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所
教授 松居靖久(まついやすひさ)
電話番号:022-717-8571、022-717-8572
E-mail:yasuhisa.matsui.d3*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因になる BRCA1 の 結合分子 RACK1 の新たな発がん機能を解明

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因になる BRCA1 の 結合分子 RACK1 の新たな発がん機能を解明
正常な細胞分裂に必要な中心体複製での新たな役割を明らかに

【発表のポイント】
● 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因になる BRCA1 の結合分子 RACK1 の 中心体複製 注1)における新たな役割を明らかにしました。
● RACK1は、細胞分裂に重要な役割を果たすPLK1 注2)とAurora A 注3)との 相互作用の「足場」として働き、Aurora AによるPLK1の活性化を促進する ことが明らかになりました。
● RACK1 は、細胞分裂のS期にPLK1の活性化を促進し、中心小体複製に 寄与することが明らかになりました。

【概要】
がん遺伝子として知られる BRCA1 は、その生殖細胞系列変異によって遺伝 性乳がん・卵巣がん症候群を引き起こします。東北大学加齢医学研究所 腫瘍生 物学分野の千葉 奈津子(ちば なつこ)教授、吉野 優樹(よしの ゆうき)助教、 小林 輝大(こばやし あきひろ)医学系研究科 大学院生(現 杉山医院)らの研 究グループは、その遺伝子産物 BRCA1 と結合する RACK1(Receptor for activated C kinase 1)が、Aurora A とpolo-like kinase 1 (PLK1)との相互作用 の「足場」として働き、S期にPLK1を活性化することで、細胞分裂時の染色体 分配に働く中心体の複製に寄与することを明らかにしました。また、がんで見ら れるRACK1の変異は、足場としての機能に異常をきたし、この機能の異常が発 がんに関与する可能性を示しました。

本研究成果は2020年 9月1日、Journal of Cell Science誌においてオンライ ンで掲載されました。 本研究は、文部科学省科学研究費補助金、がん研究振興財団 がん研究助成金、 日本科学協会 笹川科学研究助成、公益財団法人日本白血病研究基金研究助成事 業、公益財団法人高松宮妃癌研究基金の支援を受けて行われました。

【用語説明】

注1)中心体複製:細胞分裂の後、娘細胞は2個の中心小体を含む中心体を1個受 け継ぐ。S期にそれぞれの中心小体から新たな娘中心小体が複製され、G2期に は L 字型に結合した母・娘中心小体を含む中心体が 2個存在する。M 期(細胞 分裂期)にそれぞれの中心体から微小管が伸長し、紡錘体を形成して染色体の分 配に関与する。M 期の後半からG1期にかけて、母・娘中心小体間の結合が解消 され、次の細胞周期での中心小体の複製が可能になる。この現象は中心小体解離 と呼ばれ、PLK1の活性によって制御される。
注2)PLK1:分裂期キナーゼの1つで、中心体、紡錘体極などに局在し、細胞分 裂に進行に重要な役割を果たす。中心体では、中心小体の複製に重要な中心小体 解離を引き起こす。
注3)Aurora A:分裂期キナーゼの1つで、中心体、紡錘体極に局在し、細胞分裂 に進行に重要な役割を果たす。PLK1をリン酸化して活性化する。
注4)中心体:核の近くの細胞質に存在する細胞内小器官であり、中心小体と、そ の周囲の中心小体周辺物質(pericentriolar material; PCM)からなる。中心小 体は母中心小体と、その側壁に結合する娘中心小体からなり、L字型の構造をと る。中心小体周辺物質には-チュブリン環が豊富に存在し、細胞骨格の一つであ る微小管の形成起点として働く。細胞分裂期には中心体から微小管が伸長し、紡 錘体を形成する。
注5)紡錘体:細胞分裂の際に、染色体を娘細胞に均等に分配する機能をもつ。
注6)中心小体:中心体の内部に存在し、中心体の複製や機能を制御する。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
東北大学加齢医学研究所
教授 千葉 奈津子 (ちば なつこ)
電話 022-717-8477
E-mail: natsuko.chiba.c7*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

食べ物を飲み込む運動を非接触で診断測定する装置を発明

食べ物を飲み込む運動を非接触で診断測定する装置を発明
Un-invasive Motion based-Aid for Your Swallowing (U-MAY) 味覚診断装置、
高齢者医療介護「見守り」システム、機能性食品開発への応用も期待

【発表のポイント】
● 高齢者介護の現場などでは肺炎の原因となる誤嚥注1を防ぐことが重要であるが、嚥下機能注2を定量的に診断するためにはレントゲン造影など大きな
  時間と手間がかかっていた。
● 嚥下・蠕動機能を非接触で定量診断できる装置を発明、令和2年、特許を取得した(特許6692110)。
● 将来的には在宅医療介護現場のための診断システムへの応用の他、高齢者の医療介護施設における「見守り」システム、機能性食品開発への応用も
  期待される。

【研究概要】
 高齢者介護の現場などでは、誤嚥が原因となる誤嚥性肺炎が問題となっています。嚥下機能を定量的に、正確に診断するためにはレントゲンや造影剤が必要であり、現実の臨床現場では大きな手間が必要でした。東北大学加齢医学研究所・大学院医工学研究科・医学系研究科の山家智之教授、白石泰之准教授らのグループは、食べ物を飲み込む運動を非接触で測定する装置を発明し、その特許を取得いたしました(特許第6692110号)。
今回の研究成果は、診断の一助、また医療介護施設における「見守り」システムへの応用も期待されます。また、Covid-19等新興感染症を含む多くの呼吸器感染では誤嚥性肺炎の合併症例も、報告されており、将来的に新興感染症への応用も期待されます。また加齢医学研究所は、カプサイシンの持つ「嚥下反射促進機能」も発見しており「誤嚥を予防する機能性食品」の開発も期待されます。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科人工臓器医工学分野
東北大学加齢医学研究所心臓病電子医学分野
教授 山家智之(やんべ ともゆき)
准教授 白石泰之(しらいし やすゆき)
助教 山田昭博(やまだ あきひろ)
TEL:022-717-8517
E-mail: tomoyuki.yambe.a4*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学加齢医学研究所広報情報室
TEL:022-717-8496
E-mail: ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
東北大学大学院医工学研究科 広報担当
E-mail: bme-pr*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

吉野優樹助教(腫瘍生物学分野)が令和元年度勾坂記念賞を受賞しました。

吉野優樹助教(腫瘍生物学分野)が令和元年度勾坂記念賞を受賞しました。

 吉野優樹助教は、「遺伝性腫瘍原因分子によるゲノム安定性の維持機構の解明」という研究題目で、令和1年度の勾坂記念賞を受賞しました。
公益財団法人 艮陵医学振興会 勾坂記念賞は、基礎的医学研究において、若手研究者の人材発掘及び育成支援を図るため、宮城県内の教育・研究施設に在職する若手研究者を対象に、艮陵医学研究助成選考委員会の選考、理事長の決定により、1名に贈られます。2020年5月16日に予定されていた東北大学艮陵同窓会令和2年度定期総会にて授与される予定でしたが、2020年7月10日に授与されました。

詳細

[問い合わせ先]
加齢医学研究所
腫瘍生物学分野 教授
千葉 奈津子 022-717-8477
E-mail; natsuko.chiba.c7*tohoku.ac.jp(*は@に変換してください)

みんなで輪になってドラムを叩こう! 認知症や虚弱疾患があっても楽しめるプログラムを開発

みんなで輪になってドラムを叩こう!
認知症や虚弱疾患があっても楽しめるプログラムを開発

【発表のポイント】
● 認知症や虚弱性疾患があっても、座りながら実施できる30分間のドラム・コミュニケーション・プログラムを開発した。
● 12週間のドラム・コミュニケーション・プログラムを実施すると認知症高齢者の認知機能と身体機能が向上することを実証した。

【概要】
 認知症や虚弱性疾患があっても誰でも参加ができて、認知機能を維持・向上させるプログラムの開発が望まれていました。東北大学加齢医学研究所の野内類准教授と理化学研究所情報システム本部の宮﨑敦子客員研究員を中心とする研究グループは、認知症高齢者でも座りながら実施できるドラム・コミュニケーション・プログラムを開発し、その効果を実証しました。
 実証実験では、1回30分のセッションに週3回12週間参加したグループは、参加しなかったグループよりも、認知機能と上肢の身体機能が向上することが明らかになりました。
この研究の成果は、2020年7月2日発行のオンライン雑誌のFrontiers in Aging Neuroscience誌(Impact Factor = 3.633)に掲載されました

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
東北大学加齢医学研究所 
〒980-8575 仙台市青葉区星陵町4-1
担当:野内類 (のうち るい)
電話番号:022-717-8952
E-mail: rui*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
理化学研究所 情報システム本部
担当:宮崎敦子
E-mail:atsuko.miyazaki.vj*riken.jp(*を@に置き換えてください)

佐藤靖史教授が、2017年7月7日、一般社団法人日本動脈硬化学会の第18回学会賞を受賞

佐藤靖史教授が、2017年7月7日、一般社団法人日本動脈硬化学会の第18回学会賞を受賞

 日本動脈硬化学会は、学会賞を設け、我が国における動脈硬化研究に著しく貢献をした者を懸賞している。

 佐藤教授は、一貫して血管生物学に関する基盤研究を推進し、特にvasohibinファミリー分子の発見と、その血管新生や血管老化における役割について世界をリードする独創的な研究を展開したことが評価された。なお、2014年4月より2年4ヶ月間、日本動脈硬化学会理事長を務めた。

Yasufumi Sato

佐藤教授(左)と 学会理事長の山下静也先生(右)


日本動脈硬化学会
http://www.j-athero.org

[問い合わせ先]
東北大学加齢医学研究所
腫瘍制御部門腫瘍循環研究分野
教授 佐藤靖史
電話:022-717-8532
E-mail:yasufumi.sato.b3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学で動物実験を進めてきた国産唯一の植込型補助人工心臓の工場が完成。海外展開も目指します


東北大学で動物実験を進めてきた国産唯一の植込型補助人工心臓の工場が完成。海外展開も目指します

 東北大学加齢医学研究所非臨床試験推進センターで動物実験を進めてきた植込み型補助人工心臓EVAHEARTの製造工場が竣工し、内覧会、開所式が執り行われました。医療機器ベンチャーのEVIジャパン(福島市)は、国産唯一の、海外認可を受けた植込み型小型補助人工心臓の製造拠点となります。工場は鉄骨2階、延べ床面積約500平方メートル。製品の組み立てと検査用のクリーンルームや分解洗浄室を備えます。計画では、体外設置用と体内埋め込み型を合わせ、年間100〜150台の補助人工心臓を製造し、国内向けに出荷する予定となっており、新しい治療の方法論開発も検討中です。今後、米国テキサス州ヒューストンや、ドイツNRW州に設立した同社現地法人と海外展開を計ります。

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【問合せ先】
 東北大学加齢医学研究所非臨床試験推進センター 山家智之 白石泰之
 TEL 022-717-8517