◇ 2023年7月31日(月)加齢研セミナーのご案内

日時: 令和5年7月31日(月)午後5時~6時30分
場所: 加齢研実験研究棟7階大会議室
演題: GTP代謝と生命のダイナミズム:生命機能進化と生体制御への新視点
講師: 佐々木 敦朗
所属: シンシナティ大学医学部・慶應義塾大学先端生命科学研究所・広島大学病院
担当: 本橋 ほづみ(所属 遺伝子発現制御分野・内線8550)
要旨:  “What is Life?”
生命の定義の一つたるエネルギー代謝に、ATPを代表としたリボヌクレオチドは深く関わっている。例えば、脂質合成はCTP、 糖鎖合成はUTP、ATPはそれらを支える基盤として使われています。我々が取り組んでいるGTPは、細胞の主要成分であるタンパク質合成を駆動するエネルギーである。しかしながら、なぜ生命発生そして進化の過程でGTPエネルギーが使われるようになったのか?生命はATPとGTPを使い分けることで、どのような機能を獲得し進化を可能としてきたのだろうか? ダイナミックに変動するGTPエネルギー代謝を支える仕組みと変動が持つ意味は?
我々はこうした生命システムの根源的なメカニズムの謎に取り組んでいる。これまでに、GTPエネルギーを感知する“GTPセンサー”が哺乳細胞類細胞に備わっていることを見出した(Sumita et al., Molecular Cell, 2016; Takeuchi et al., Structure 2022)。GTPセンサーの正体は、GTPを基質としリン酸転移反応を行う、キナーゼ=ATPのドグマを破る、脂質キナーゼであった。さらに、がん細胞においてGTP代謝リプログラムが起こり、同化反応促進の原動力となっていることを見出してきた(Kofuji et al., Nature Cell Biology, 2019)。GTPエネルギー代謝には、多くの秘めたる驚くべき働きがある。本セミナーではGTPの視点からみえてくる新たな生命機能―ストレス制御や癌・代謝疾患・寿命への関与―について最新のデータとともにご紹介する。