◇ 2023年8月1日(火)加齢研セミナーのご案内

日時: 令和5年8月1日(火)午後5時~6時30分
場所: 加齢研実験研究棟7階セミナー室(1)
演題: 老化における活性酸素による核酸の酸化とその防御機構の意義
-発がんからアルツハイマー病まで-
講師: 中別府 勇作
所属: 日本学術振興会サンフランシスコ研究連絡センター・センター長 /九州大学名誉教授
担当: 本橋 ほづみ(所属 遺伝子発現制御分野・内線8550)
要旨: 活性酸素は、ミトコンドリアにおける電子伝達系をはじめとする正常な代謝経路の副産物として生成されるだけでなく、宿主防御、神経伝達、血管拡張およびシグナル伝達などに必須な分子としても能動的に産生される。活性酸素の生成は、電離放射線、化学物質、金属などさまざまな環境因子への曝露や病的状態で顕著に増加する。活性酸素は反応性が非常に高いため、脂質、タンパク質、核酸などの細胞を構成する生体分子を容易に酸化し、酸化ストレスを引き起こす。酸化ストレスは加齢とともに亢進するため、老化に伴い多様な細胞機能障害を引き起こし、変性疾患や発がんの原因になると考えられている。
細胞内のさまざまな生体分子の中でもDNAやその前駆体ヌクレオチドの酸化は、突然変異やプログラム細胞死の原因となることが明らかになってきた。生殖細胞系列の突然変異は遺伝的多形や遺伝性疾患の原因となり、体細胞における突然変異は発がんの原因となる。
我々はこれまで、代表的な酸化塩基、8–オキソ–7, 8–ジヒドログアニン(8–オキソグアニン:8–oxoG)に注目し、DNAに8–oxoGが蓄積するのを回避するための防御機構を明らかにし、さらにその破綻がもたらすさまざまな病態について、発がんからアルツハイマー病などの老化関連疾患に注目して研究を進めてきた。 本セミナーでは、発がんとアルツハイマー病の発症過程に8-oxoGのゲノム蓄積とその防御機構がどのように関与するのか,我々の研究成果をもとに紹介する。
また、2022年4月から勤めている日本学術振興会サンフランシスコ研究連絡センターの活動についても紹介したい。