世界をさきがけるトリオ脳科学 個性を創造する「世代間伝達」の仕組みの探究を開始(スマート・エイジング学際重点研究センター:松平泉助教)

2023年9月28日『Frontiers in Psychiatry』誌に論文掲載

「親子で性格が似ている」「親も子もうつ病になった」など、考え方の特徴や精神的な不調が、まるで連鎖するように親子で共通して見られることがあります。また、親が幼少期に虐待などの辛い体験をした場合、その影響は次世代の脳の発達や精神状態にも現れると言われています。親の性格や経験が次世代へ引き継がれているとも言うべきこれらの現象は「世代間伝達」と呼ばれています。

世代間伝達はどのようにして起こるのか、誰にでも起こるのか、ヒトの精神的健康における世代間伝達の役割とは何なのか、明確な答えは未だ得られていません。そこで、東北大学学際科学フロンティア研究所の松平泉助教、同大学医学系研究科の山口涼大学院生(日本学術振興会特別研究員)、同大学スマート・エイジング学際重点研究センターの瀧靖之教授の研究グループは、父・母・子(=親子トリオ)を対象とした脳科学の研究プロジェクト『家族の脳科学(英語名:Transmit Radiant Individuality to Offspring [TRIO] study)』を開始しました。この研究では、世代間伝達とヒトの個性の関係性の深淵な理解を目的として、親子3名の脳画像・遺伝子・生育環境・性格・認知能力、などのデータを取得し、相互の関係性を詳細に分析します。

本研究は2021年にスタートし、地域にお住まいの皆様のご協力のもと、これまでに約200トリオのデータ取得を行いました。本研究の目的、データ取得の方法、将来展望をまとめたプロトコル論文が、2023年9月28日にFrontiers in Psychiatry誌に掲載されました。今後もサンプル数を拡大しながら研究を展開し、ヒトの精神的健康の維持に貢献する新たな知見の創出を目指します。

図:TRIO studyの概要。(左上)研究参加者募集用のプロモーション画像。(左下)世代間伝達をキーワードとして、ヒトの個性が形成される仕組みを探究することがTRIO studyの目的です。(右上)研究参加者の皆様から脳画像を中心に遺伝子や生育環境などあらゆる情報を取得させて頂いています。(右下)思春期以上の子とその父母のトリオを対象としている点が、国内外の他のコホートにはないTRIO studyの特色です。

【論文情報】
タイトル:Transmit Radiant Individuality to Offspring (TRIO) study: Investigating intergenerational transmission effects on brain development
著者: Izumi Matsudaira*†, Ryo Yamaguchi†, and Yasuyuki Taki (†共同第一著者)
*責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 松平泉
掲載誌:Frontiers in Psychiatry
DOI: 10.3389/fpsyt.2023.1150973
URL: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2023.1150973/full

【お問い合わせ先】
スマート・エイジング学際重点研究センター 助教 松平 泉
E-mail:izumi.matsudaira.e4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)