ニコチンアミドメチル基転移酵素による脂質代謝制御 ー S-アデノシルメチオニン量の調節を介したしくみの解明 ー(生体情報解析分野:河岡准教授)

【発表のポイント】
⚫ ニコチンアミドメチル基転移酵素 (NNMT)注1 がニコチンアミド代謝と脂質代謝を繋ぐことを明らかにしました。
⚫ このリンクの鍵は、NNMT およびその他多くのタンパク質が基質として利用する「S-アデノシルメチオニン」であることを明らかにしました。
⚫ NNMT の脂質代謝における貢献度はその細胞の系譜や状態によって異なることも明らかにしました。

【概要】
NNMT はがんに起因する肝臓の異常において重要な分子で、脂肪肝などとの関わりも指摘されています。しかし NNMT が肝臓の代謝をどのように調節しているのかについてはよくわかっていませんでした。
東北大学 加齢医学研究所 生体情報解析分野 河岡慎平准教授 (兼務:京都大学医生物学研究所 臓器連関研究チーム 特定准教授) の研究チームは、NNMT による S-アデノシルメチオニン注 2 の制御が間接的に脂質代謝に影響することを発見しました。
NNMT は脂肪肝などとの関わりも指摘されており、本研究が NNMT という重要な分子の作用機序を理解する重要な基盤となることが期待されます。

本研究成果は 2023 年 4 月 4 日に日本生化学会英文誌 The Journal of Biochemistry に掲載されました。

図:AML12細胞では NNMTは S-アデノシルメチオニン (SAM) の主な消費者であり、NNMTを阻害するとSAMが蓄積し、その結果として中性脂肪が減少することが今回明らかになりました。NAM; ニコチンアミド、MNAM; メチルニコチンアミド、SAH; S-アデノシルホモシステイン。

【用語説明】
注1. ニコチンアミドメチル基転移酵素 (NNMT)
S-アデノシルメチオニンのメチル基をニコチンアミドへと移し、メチルニコチンアミドとS-アデノシルホモシステインを生成する酵素。マウスでは肝臓や脂肪組織で強く発現している。

注2. S-アデノシルメチオニン
代謝物の一種で、メチル基の供与体としてはたらく。S-アデノシルメチオニンのメチル基はさまざまな酵素に利用され、メチル基の受け手となるタンパク質や代謝物の性質を変化させる。S-アデノシルメチオニンのメチル基がとれたものが S-アデノシルホモシステインである。

詳細(プレスリリース本文)

【お問い合わせ先】
<本研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所 生体情報解析分野 准教授 河岡 慎平
TEL:022-717-8568
E-mail:shinpei.kawaoka.c1*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学法人東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp
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