老化に伴う睡眠障害をもたらす神経細胞を同定 ー食餌制限によって改善されるメカニズムを解明ー(統合生理学研究分野:佐藤亜希子准教授)

【発表のポイント】
⚫ マウスの老化に伴う睡眠の不具合、睡眠断片化注1 を引き起こす重要な神経細胞として、脳内の視床下部に存在する神経細胞を同定しました。
⚫ この神経細胞で Prdm13 注2 遺伝子を欠損させたマウスでは、若齢にもかかわらず、老齢マウスのような睡眠断片化が認められました。
⚫ 食餌制限が老化に伴う睡眠断片化を顕著に改善すること、また、Prdm13 陽性神経細胞がこの改善に必須であることを明らかにしました。
⚫ Prdm13 遺伝子の発現を老齢マウスの視床下部で高めると、睡眠の不具合が有意に改善され、Prdm13 陽性経細胞の機能回復が老化に伴う睡眠の不具合改善に重要であることが明らかとなりました
。

【概要】
老化に伴う様々な睡眠の不具合は、私たちの日々の生活へ悪影響を及ぼしうる大きな社会問題となっています。
東北大学加齢医学研究所の佐藤亜希子准教授(兼務:国立長寿医療研究センター研究所)と国立長寿医療研究センター研究所の辻将吾研究員を中心とする研究チームは、老齢マウスに認められる睡眠断片化に関わる神経細胞として、脳内の視床下部に Prdm13 陽性神経細胞を見出しました。また老化に伴う睡眠断片化は食餌制限により顕著に改善することができ、その作用には Prdm13 陽性神経細胞が必須である、ということも明らかにしました。
本研究は、国内外の複数の研究機関(ワシントン大学(米国ミズーリ州)、至学館大学、名古屋大学、筑波大学、大阪大学、国立長寿医療研究センター)との共同研究により実施されました。

本研究成果は、EMBO、Rockefeller University、Cold Spring Harbor Laboratory が共同発行する国際科学誌 Life Science Alliance において、2023 年 4 月 12 日にオンライン版で発表されました。

図:視床下部背内側部の Prdm13 陽性神経細胞の機能低下が老化マウスに認められる異常な睡眠覚醒形態(睡眠断片化)を引き起こす

【用語説明】
注1 睡眠の断片化:睡眠エピソードの平均の長さが短くなり、エピソードの回数が増える現象。これにより睡眠の連続性が低下し、睡眠の質の低下につながるとされている。老化だけではなく神経変性疾患などの病態でも起こることが知られ ている。
注2 PR ドメインとジンクフィンガードメインを含むタンパク質。視床下部に発現する神経ペプチドの発現量を調節している。

詳細(研究成果本文)

【お問い合わせ先】
<本研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所 統合生理学研究分野 准教授 佐藤 亜希子
E-mail:akiko.satoh.b7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学法人東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)