◇ 2023年4月17日(月)加齢研セミナーのご案内
日時: | 令和5年4月17日(月)午後4時〜 |
場所: | 加齢医学研究所実験研究棟7階セミナー室1 |
演題: | アルツハイマー病血漿のマルチオミクス解析による仮設構築への挑戦 |
講師: | 小田 吉哉 |
所属: | 東京大学大学院医学系研究科 |
担当: | 魏 范研(所属 モドミクス医学分野・内線 8562) |
要旨: | 高齢者の増加に伴い、アルツハイマー型認知症(AD)の患者数も増加している。最近抗アミロイド抗体薬であるAducanumabとLecanemabがFDAから加速承認を受けた。これらの薬剤は、認知症の進行速度を遅らせるだけで、アルツハイマー病を治癒したり、症状を改善したりするものではない。そのため、新たな治療法の開発が求められている。しかし、動物モデルは既存の仮説に基づいているため、新しい仮説を構築するには不向きである。また、初期AD患者の脳サンプルは入手が極めて困難である。そこで、ヒトの血漿サンプルから仮説を構築することを試みている。 ミニメンタルステート検査(MMSE)が22~23の軽度AD患者62名(平均年齢75.7(範囲:62-85)、女性66.1%)、軽度認知障害(MCI)146名(平均年齢78.5(範囲:57-93)、女性61.0%)、認知正常者(NC)74名(平均年齢73.7(範囲:66-90)、女性38.9%)を国立長寿医療研究センターから抽出入手した。なおNC対象者は、採血後1年以上、認知機能が正常であることを確認している。メタボロミクスはLC/MSおよびGC/MS、リピドミクスはLC/MS、プロテオミクスはLC/MSおよびProximityExtensionAssay(PEA)により測定した。 最初の解析から「血小板の活性化と凝集、シグナル伝達」と「止血」のパスウェイが注目された。有意な増減が観測されたタンパク質には、脂質分子と機能的に関連するものが複数あり、実際、これらの脂質分子も疾患によって変動していた。これらタンパク質-脂質経路は、血管壁と関連していると考えられた。メタボローム解析でも、血管の脆弱性に関連する代謝物の変化が複数見られた。さらに、血液脳関門機能やシグナル伝達に関わる多くの分子も変動していた。これらの結果から、血管壁の損傷とシグナル伝達の活性化がADの初期に起こり、恒常性の乱れがADの発症に関連することが示唆された。 講演当日は、これらの技術紹介と具体的なデータについて紹介したい。 |