◇平成29年7月26日(水)加齢研セミナーのご案内
日時: 平成29年7月26日(水)午後4時~6時
場所: 加齢研実験研究棟7階 セミナー室1
演題: メディエーターの結晶構造から明らかになってきた転写開始のメカニズム
講師: 野澤 佳世
所属: マックス・プランク研究所
担当: 小椋 利彦(所属 神経機能情報研究分野)
 (連絡先:吉田万里子 内線 8566)
要旨: タンパク質の鋳型となる mRNA や遺伝子のオン・オフを切り替える小分子 RNA は、 RNA ポリメラーゼ II (Pol II)が、種々の基本転写因子と共同しながら合成している。し かし、Pol II と基本転写因子だけでは、細胞の分化や生育、発生状態に応じた転写制御 を行うことはできない。メディエーター (MED)は、転写開始領域から遠く離れたエン ハンサーDNA と転写マシーナリーを直接繋ぐことによって、真核生物のほとんどすべ ての遺伝子に活性化シグナルを伝える、重要な転写コファクターである。酵母において MED は、~1.4 MDa、25 サブユニットからなる超分子複合体であり、ヘッド、ミドル、 テール、キナーゼから構成される、そのモジュールのほとんどが菌類からヒトまで、保 存されている。テールやキナーゼモジュールが、アクチベーターとの相互作用に関係す る一方で、ヘッドとミドルモジュールは、MED のコア (cMED)と呼ばれ、プロモータ ー領域で、Pol II や基本転写因子 TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIH に直接作用して、転写開 始前複合体 (PIC)の形成を促進する。 本研究では、X 線結晶構造解析を用いて、酵母の生存に必要不可欠なサブユニットす べてを含む、400 KDa、15 サブユニットの cMED の構造を可視化した。結晶構造から cMED は、13 のサブモジュールで構成されていることが明らかとなり、中でも Med14 は、ユビキチン結合酵素に似たユニークなコンフォメーションをとっていた。得られた cMED の構造を PIC の低分解能電子顕微鏡像に当てはめることで、MED と Pol II の新 たな結合面が可視化されると共に、cMED のフックサブモジュールが、Pol II Rbp1 サブ ユニットの C 端ドメイン (CTD)のリン酸化を促進する機構が示唆された。