【発表のポイント】
⚫ 日本人2,574名(4〜87歳)の大規模調査で、つながり(ソーシャルキャピタル:SC)(注1)が、が高い層と低い層の二峰性に分布することを発見しました。この二峰性は子ども・親・子どものいない成人の全世代で再現されました。
⚫ SCの二極化を分けるのは収入・学歴ではなく、共感力などの心理特性と幼少期の親子関係の質でした。
⚫ 脳MRI(注2)データ(N=108)の解析では、SCが高い層では脳ネットワークのスモールワールド性(注3)や、社会的脳に関する領域(角回・楔前部・前帯状皮質)の、皮質厚や髄鞘化指標(注4)が高い事を示しました。

【概要】
 2024年に世界初の孤独・孤立対策推進法が施行されるなど、人と人との「つながり」をいかに育むかは国家的課題となっています。しかしその基盤となるソーシャルキャピタル(SC)が、なぜ個人間で大きく異なるのかは十分に解明されていませんでした。
 東北大学大学院情報科学研究科/加齢医学研究所准教授で慶應義塾大学院教授の細田千尋らは、日本人2,574名(4〜87歳)の全国横断調査と独立した脳画像研究(N=108)により、高SC群と低SC群に分かれる二峰性分布を示すことを実証しました。この二峰性分布は親・子ども・子どものいない成人のすべての世代で見られ、SCが高い人ほどウェルビーイングが高い事も示されました。二極化を分けるのは世帯収入や学歴ではなく、共感力や外向性といった心理特性と、幼少期に親と築いた関係の質でした。脳画像解析では、高SC群では脳ネットワーク全体のスモールワールド性が有意に高く、Theory of Mind(他者の心の理解)に関わる角回・楔前部・前内側前頭前野に低SC群との違いが見られました。本研究は、つながりの格差を、心理・親子関係・脳という多層から捉えたもので、孤独・孤立対策やウェルビーイング施策に科学的基盤を提供します。
 本研究は7月21日に科学誌Scientific Reportsに掲載されました。


プレスリリース図

図1. ソーシャルキャピタルの分布と心理・親子関係との関連。親・子ども・子どものいない成人(高齢者含む)いずれもソーシャルキャピタルは低群と高群の2つの山をもつ分布を示した(上段)。また、ソーシャルキャピタルが高い人では、主観的ウェルビーイングが高い傾向がみられた(下段)。

【用語説明】
注1.ソーシャルキャピタル:人と人との間に形成される信頼、互恵性、支援、協力関係などの社会的資源のこと。本研究では、単なる知人や友人の数ではなく、信頼できる人がいること、困ったときに支え合えること、互いに協力できることに着目している。
注2.MRI:磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)の略。強い磁場と電波を用いて、脳など体内の構造を画像化する方法。本研究では、脳の構造的特徴を調べるために用いた。
注3.スモールワールド性:ネットワークが、近くの領域同士のまとまりやすさと、遠くの領域同士を効率よくつなぐ性質を併せ持つこと。脳ネットワークでは、情報処理の効率性に関わる特徴と考えられている。
注4.皮質厚・髄鞘化:皮質厚は大脳皮質の厚さを示す指標。髄鞘化は神経線維を覆う髄鞘の発達や密度に関わる指標で、神経情報伝達の効率と関連すると考えられている。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院情報科学研究科
東北大学加齢医学研究所
准教授 細田千尋
TEL: 022-717-8507
Email: chihiro.hosoda.d8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院情報科学研究科
広報室 小野寺祐美子
TEL:022-795-4529
Email: koho_is*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)