加齢に伴う酸化ストレスが染色体不安定性をひき起こす ー 老化すると遺伝情報が安定に保たれなくなる一因を解明 ー(分子腫瘍学研究分野:田中教授)

【発表のポイント】
⚫ 年をとったマウスの細胞では、染色体不安定性(細胞が分裂する時に染色体が均等に分配されない状態が存在する結果、染色体の数や構造の異常が増加しており、)これにはミトコンドリアの機能低下に起因する酸化ストレスが関係していることがわかりました。
⚫ 遺伝情報が安定に保たれないことは老化の特徴の一つとされており、本研究で見られた染色体不安定性は、その一因として老化に伴うがんなどの病態の発生に関係していることが考えられます。

【概要】
遺伝情報が安定に保たれなくなることは、老化の特徴の一つとされています。その一方で、遺伝子の集合体である染色体の数や構造に異常が起こることと老化との関係についてはよくわかっていません。
東北大学加齢医学研究所・分子腫瘍学研究分野の陳冠大学院生(研究当時)、田中耕三教授らの研究グループは、年をとったマウスの細胞では、染色体の数や構造の異常が高頻度で発生する状態である染色体不安定性が見られることを示しました。
この染色体不安定性の発生には、細胞内のミトコンドリア(注 1) の機能低下に起因する酸化ストレスが関係していることがわかりました。染色体不安定性は、多くのがんで見られる特徴でもあり、老化に伴う染色体不安定性は、遺伝情報の変化をひき起こし、がんなどの病態の発生に関係することが考えられます。

本研究成果は、6月8日に学術誌 Journal of Cell Science 誌に発表されました。

図 老化により染色体不安定性が生じる過程
老化に伴ってミトコンドリアの機能が低下し、活性酸素種が増加することにより酸化ストレスが生じる。酸化ストレスは DNA 複製のスムーズな進行を妨げ(複製ストレス)、複製ストレスは染色体の数や構造の異常の増加(染色体不安定性)をひき起こす。

【用語説明】
注1. ミトコンドリア:
細胞内小器官の一つであり、酸素を利用してエネルギー(ATP)を産生するが、その過程で活性酸素種が生じ得る。

詳細(プレスリリース本文)

【お問い合わせ先】
<本研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所 分子腫瘍学研究分野 教授 田中 耕三
E-mail:kozo.tanaka.d2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学法人東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)