RNA 修飾と生活習慣病に関する総説論文を発表 ー 新たな治療法や予防法の開発に期待 ー(モドミクス医学分野:魏教授)
【発表のポイント】
⚫ 生体内におけるRNA修飾注1の役割、およびRNA修飾と生活習慣病注2の関わりについて概説した。
⚫ 環境要因によるRNA修飾の制御、RNA修飾と後天的ゲノム修飾注3の関わりについて考察した。
⚫ RNA修飾に着目した生活習慣病の研究によって、肥満や糖尿病に対する新たな治療法や予防法の開発が期待される。
【発表概要】
肥満や糖尿病などの生活習慣病の発症には、環境要因が深く関わっています。これまでの生活習慣病の研究では、遺伝子や後天的ゲノム修飾(エピゲノム)に着目した研究が中心に行われてきました。RNA修飾はRNAの安定性、細胞内局在、および翻訳の効率を調節することにより、遺伝子発現注4に大きな影響を与えます(図)。近年、RNA修飾と生活習慣病に関する研究が報告されているが、これらの研究を概説した総説はありませんでした。
東北大学大学院医学系研究科/東京大学先端科学技術研究センターの酒井寿郎教授、東北大学加齢医学研究所の魏范研教授、東北大学医学系研究科の松村欣宏准教授は、RNA修飾(エピトランスクリプトミクス)と代謝性疾患の研究について概説した総説論文を発表しました。
本総説論文では、生体内におけるRNA修飾の役割を説明し、RNA修飾と生活習慣病の最新の研究を概説しました。また、環境要因がどのようにRNA修飾を制御し、RNA修飾がどのように後天的ゲノム修飾と関わり、疾患の発症や予防に働くのかについて考察しました。
本総説論文により今後のRNA修飾に着目した生活習慣病の研究が加速し、肥満や糖尿病に対する新たな治療法や予防法につながることが期待されます。
本研究成果は2023年3月23日に国際科学誌『Nature Metabolism』オンライン版に掲載されました。
図:環境要因によるRNA修飾と後天的ゲノム修飾の制御。環境要因は後天的ゲノム修飾だけでなく、RNA修飾を変化させ、遺伝子発現を調節し、疾患の発症と予防に寄与する。
【用語説明】
注1. RNA修飾
DNAから転写されたRNAが受ける多様な化学修飾。RNA修飾の研究をエピトランスクリプトミクスと呼ぶ。現在までに約170種類におよぶRNA修飾が見つかっている。RNA修飾は、RNAの安定性、細胞内局在、翻訳の効率を制御する。
注2. 生活習慣病
食習慣、運動習慣、飲酒等の生活習慣(環境要因)が、その発症・進行に関わる疾患。例えば、糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症。
注3. 後天的ゲノム修飾
ゲノムDNAのメチル化、ヒストンタンパク質の多様な化学修飾。エピゲノムとも呼ばれる。環境要因は細胞内に伝わり、後天的ゲノム修飾を変化させ、遺伝子発現を調節する。後天的ゲノム修飾の異常は、生活習慣病の発症と関わる。
注4. 遺伝子発現
遺伝情報をもとに目的のタンパク質をつくるまでの過程を意味する。細胞内でDNAは先ずRNAに転写され、RNAはタンパク質に翻訳される。
【お問い合わせ先】
<本研究に関すること>
東北大学加齢医学研究所 モドミクス医学分野 教授 魏 范研
TEL:022-717-8562
E-mail:fanyan.wei.d3*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学法人東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)