世界初のアルツハイマー病に対する超音波治療の開発 – 探索的治験で期待される結果 -(認知症治療医薬開発寄附研究部門:荒井名誉教授)

【研究のポイント】
⚫超高齢社会においてアルツハイマー病の患者が世界的に急増しているが、有効で安全な治療法の開発が待たれている。
⚫低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS) 治療が、アルツハイマー病に対し、有効かつ安全であることを動物モデルにおいて世界で初めて明らかにしていた。
⚫ さらに、早期アルツハイマー病の患者に対して LIPUS 治療の探索的治験を実施した結果、その安全性が確認され、有効性を強く示唆する結果が得られた。
⚫ 今後、症例数を増やした最終的な検証的治験で確認される必要がある。

【概要】
現在、超高齢社会を迎え、アルツハイマー病の患者が世界的に急増していますが、有効で安全な治療法の開発が待たれています。東北大学大学院 医学系研究科の下川宏明客員教授らの研究グループは、低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS) がマウスのアルツハイマー病モデルにおいて有効かつ安全であることを示し、また、その詳細な作用機序を明らかにしてきました。この結果に基づき、2018 年~2021 年にかけて早期アルツハイマー病の患者を対象に、探索的治験を実施しました。その結果、LIPUS 治療の安全性が確認され、有効性が強く示唆される結果が得られました。この探索的治験の結果は、9 月 15 日に国際的な英文総合医学雑誌 Tohoku Journal of Experimental Medicine にオンライン掲載されました。

このアルツハイマー病に対する LIPUS 治療機器は、9 月 5 日付けで厚生労働省の「先駆的医療機器指定制度」の対象品目に指定されました。
tanaka

図 低出力パルス波超音波治療
(A)パルス波超音波の照射条件 、(B)治療装置の外観と装着の様子、(C)ランダム化比較試験(RCT trial)の治療スケジュール

【用語説明】
 低出力パルス波超音波:人間の可聴域を超える周波数(20kHz以上)を持った波は超音波と呼ばれ、媒質を振動して伝導する縦波(疎密波)から構成される。パルス波は、連続的に音波を発信し続ける連続波とは対照的に、断続的に音波を発信する照射方法であり、生体内の機械的振動によって生じる熱の発生を抑えられるため、連続波よりも高い強度での照射が可能になる。

詳細(プレスリリース本文)

記者説明会の様子(東北大学東京分室)
2022年9月16日(金)開催

【問い合わせ先】
(報道に関すること)
東北大学 加齢医学研究所 広報情報室
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)