歯科金属アレルギーにおけるアレルギー抗原の発現機構を解明

【発表のポイント】
● 培養細胞に金属アレルギーの原因金属の一つであるパラジウムの溶液を加えると、免疫反応に重要な MHC 注1クラス I が一過性に細胞内に取り込まれ、その後細胞表面へ再出現することが判明しました。
● MHC クラス I の一過性の細胞内在化に伴い、MHC クラス I 上に提示される抗原ペプチドが置き換わることが明らかになりました。

● パラジウムによる抗原ペプチド置換によりアレルギー抗原が発現し、アレルギー性 T細胞が活性化されることが明らかになりました。
● パラジウムによる MHC クラス I の内在化を抑制することが歯科金属アレルギーの予防・治療法の開発につながるものと期待されます。

【概要】
金銀パラジウム合金は保険診療での歯科金属材料とし、歯科治療で広く用いられています。銀歯の治療は、患者の QOL の向上に大きく貢献している一方で、歯科金属アレルギーの増加が問題でした。歯科金属アレルギー、パラジウムが一因であるとされてきましたが、パラジウムは材料学的に安定な貴金属で、なぜ病気の原因となるのか不明でした。

東北大学加齢医学研究所 生体防御学分野 伊藤甲雄助教らは、札幌医科大学大学院医学研究科 病理学講座、東北大学大学院薬学研究科 生活習慣病治療薬学分野と共同で、パラジウムによる MHC の一過性の細胞内在化を発見し、それに伴う抗原ペプチドの置換により、アレルギー抗原が発現して病原性 T 細胞の活性化がおこり、金属アレルギーが発症することを明らかにしました。これまで金属アレルギーの治療は、その原因が不明だったため、原因金属の置換や抗炎症薬投与などの対症療法にとどまっています。本研究成果をもとに、金属アレルギーの新しい治療法の開発が期待されます。本研究は 2021 年 12 月 23 日に Frontier in Immunology に掲載されました。

ogasawara図. パラジウムによる金属アレルギー誘導機構



詳細(プレスリリース本文)
【問い合わせ先】
東北大学加齢医学研究所 生体防御学分野
担当 教授 小笠原康悦
電話022-717-8579
E-mail: immunobiology*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)