BRCA1 が関与するPARP 阻害薬の新たな耐性機序を発見
ATF1 の発現量が効果予測のバイオマーカーになる可能性

【発表のポイント】
● 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因遺伝子 BRCA1 が、転写因子 ATF1 の
転写活性化能を促進し、細胞生存能を上昇させることを明らかにしました。
● 機能的な BRCA1 を保持するがん細胞では、相同組み換え修復能が異常でも
ATF1 の高発現が PARP 阻害薬やプラチナ系抗がん薬への耐性を引き起こすこ
とを明らかにしました。
● がん組織での ATF1 の発現量がこれらの薬剤の有効性を予測する新たなバイオ
マーカーになる可能性が示唆されました。

【概要】
PARP阻害薬は、近年、乳がんや卵巣がんなどの治療に用いられる分子標的治療薬で、プラチナ系抗がん薬は、以前より多くの種類のがんの治療に用いられてきた抗がん薬です。今回、東北大学加齢医学研究所 腫瘍生物学分野の千葉奈津子(ちば なつこ)教授、吉野優樹(よしの ゆうき)助教、遠藤栞乃(えんどう しの)大学院生らの研究グループは、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因遺伝子であるBRCA1が転写因子ATF1の標的遺伝子の転写活性化能を促進することで、相同組み換え修復能が異常でも、PARP阻害薬やプラチナ系抗がん薬への耐性化を引き起こすことを明らかにしました。機能的なBRCA1を保持するがんでは、 ATF1の発現量がPARP阻害薬やプラチナ系抗がん薬の有効性を予測する新たなバイオマーカーになる可能性が示唆されました。

本研究成果は2021年11月12日Cancer Research Communications誌に掲載されました。

本研究の一部は、文部科学省科学研究費補助金、公益信託 弘美医学研究助成基金、公益財団法人 黒住医学研究振興財団、公益財団法人 中冨健康科学振興財団の支援を受けて行われました。

chiba

詳細(プレスリリース本文)
【問い合わせ先】
東北大学加齢医学研究所
教授 千葉 奈津子 (ちば なつこ)
電話 022-717-8477
E-mail: natsuko.chiba.c7*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)