田中 耕三
Kozo TANAKA
 

ヒトから酵母へ 酵母からヒトへ

染色体の異常とがんとの関係を追い求めて
 


私が血液内科医として働いていたころは、白血病で見られる染色体異常によって起こる遺伝子の変化が、その発症に関わっていることが次々に明らかにされていました。その中で私は、そもそもなぜ染色体の異常が起こるのだろうかということに興味をもちました。そこでまずヒトの細胞で染色体が切れた時にそれをつなぐしくみを研究しました。つぎに留学したスコットランドでは、酵母を使って細胞が分裂する時に染色体が2つの細胞に分配されるしくみを研究しました。酵母とヒトは10億年以上前に共通の祖先から分かれて進化してきましたが、細胞がふえるしくみやこれに関連する遺伝子はとてもよく似ています(これを「保存されている」といいます)。酵母は遺伝子を人工的に操作するのが簡単で、アイディアを容易に実行にうつすことができます。アイディアを出してはそれを確かめるというサイクルに熱中するうちに、ヒトでも保存されている染色体分配のしくみを見つけることができました。そして8年前に加齢研に移ってからは、またヒトの細胞やマウスを使って研究しています。今ではヒトの細胞やマウスでも遺伝子の操作がどんどん簡単になってきました。10億年の時を行き来して、少しでもがんができるしくみに近づきたいと思っています。

次回は腫瘍生物学の千葉先生です。

名 前:田中 耕三(たなか こうぞう)

出身地:鹿児島県
趣 味:娘と散歩、歴史小説、メダカの飼育
分野名:分子腫瘍学研究分野