竹内 光
Hikaru Takeuchi
 

日本の研究の凋落

若手の視点から
 



Rising starという最初のpublicationから12年以内の若手研究者のh-indexに相当するものを評価するシステムが発表されました(https://research.com/scientists-rankings/rising-stars/jp)。この評価システムが正確かはわからないのですが興味深いのは中国から183名がこのトップ1000にランクインし、日本からは4名、日本の4名のうち日本人と思しき人は1名という惨憺たる現状でした。

若手に限らず日本の科学の凋落が止まらない一方で中国の隆盛もまた止まらない一方である事が各種データから指摘されて久しいです。様々な背景があるのでしょうが若手の視点から見ると、私は中国の研究者が論文を出版するとボーナスがでるという仕組みに注目しています。

日本の若手は成果に対して稀なポスト取得機会以外で直接的に評価を受ける事はすくなく成果を出しても雇止め制度により雇用は終了するので年中、実際の研究成果を出す事だけでなく計画を書いて研究費を申請し、ポストに応募するための書類をかいています。研究費申請では実績は限定的な評価しかされないので、研究者は実績があっても研究費がない期間が生まれるリスクを含んでいます。
一方で一旦パーマネントになったベテランの研究者はそれはそれで成果によって大きく待遇が違うという事もないので、インセンティブが欠如しているようです。
雇止めの制度下では研究者は年限が来ると職場を変えなくてはならず日本にそんなに自分の専門の研究ができるポストが(雇止めの年に)ある訳もないので自分の専門の研究ができないポストに変更される事を余儀なくされている事が多い現状もあるように見えます。特に上の方のポストにいくほどポストが少ないためそうなります。
教員任期法では人材の入れ替わりによる活性化と曖昧な言葉でこれを好ましい事のようによびこれをわざわざ目指しているのですが、現場から見ると、全員にこれを適用してしまったら研究者が自分の専門の研究を続けられない法でしかありません。
10年たったら雇用を保証するという法律を作ったら大学は9年で雇用を終了するシステムを作りました。若手のポストを増やす事に対するインセンティブを大学に与えたら、若手の一時的なポストを増やす事によってそのインセンティブを達成しようとするために一層、中堅のための安定したポストは減ったという事も起こっていると聞きます。本質的には財源が足りない事と、既に分けてあるパイを削る訳にはいかないのでこれから配るパイを減らす事でしか対応はできないという事なのでしょう。
これだけ長い事この手の事が言われてダメだったという事は日本の科学は財源の問題もありもう難しいのであろうと思います。が、成果を出したらボーナスを出す、画餅ではなく実績を重視して研究費を出す、成果を出したら雇用を保証する、あるいは一定程度の実績があれば雇用を保証した上で、さらなるインセンティブは成果に対するボーナスによって出す。そういう一般企業が当たり前に日本でやってきた事ができれば研究者は安定したポストのもとに実際の研究成果を上げる事に奮闘するような複雑適応系にならないのだろうかと考えています。

名 前:竹内 光(たけうち ひかる)

出身地:東京都
趣味:有酸素運動、読書、漫画等
分野名:認知機能発達寄附研究部門