舟橋 淳一
Junichi Funahashi
 

英国人気質


 



自動車取引に携わる「BuyaCar.co.uk」が英国人ドライバー1000人にたずねたところ、60%が愛車に名前をつけて呼んでいることが判明したと、「デイリー・メール」紙が伝えたという記事を数年前に読んだ。名前をつけるほどなので、おそらく愛車にかける愛情も相当なものなのではなかろうか。そう思うのにはもう一つの理由があって、それはオーナーズクラブのフォーラム(電子掲示板)の記事の充実の度合いである。自分で修理できるところは可能なかぎりDIYするという人が大勢いるようで、盛んに情報交換が行われている。

ところで、しばらく前から愛車のエンジン警告灯が、何度エラー消去しても再点灯するようになっていた。いつも世話になっている修理工場に相談すると、おそらくタイミングチェーンが伸びているから、修理するとなると相当な出費の覚悟が必要だと言われてしまう。そこで、かのフォーラムを検索してみる事にした。すると、まったく同じ問題の解決に関する投稿が複数見つかった。まとめると「タイミングチェーンの伸びでエラーになる例は少ない。ほとんどは可変バルブタイミング機構の油圧を制御する電磁弁の動作不良が原因だ」という事だ。さらに「電磁弁の純正部品は高いが、ゼネラルモーターズ(GM)社の部品が安くてピッタリ合うのでそれを使うと良い」というアドバイスまであった。フィアットとアルファロメオがGMと提携していた時期に設計された車なので、一部の部品は共用されていたらしいのだ。この提携は、アルファロメオファンの間ではかなり評判が悪かったようだが、意外なところで恩恵にあずかれたわけだ。

そんなわけで、例によってebayで米国からGMの正規部品を2個(吸気バルブ側と排気バルブ側)取り寄せて交換することにした。作業は、エンジンの化粧カバーを外したら、配線のコネクタと部品の固定ネジを一つ取り外し、シリンダヘッドから引き抜いて取り替えるだけという簡単なもの。部品交換の結果、記事の通りエラーは出なくなり、これまた記事の通りに加速時の吹き上がりが良くなった。中古で入手した当初から、この車の加速時の感覚にやや納得がいかないところがあったのだが、どうやら当時からその部品には、エラーと判定されるほどでは無いにしろ既に問題が生じていたようだ。交換で本来の姿にようやく戻ったということなのだろう。また英国人の車好きに助けられた一件であった。

写真「新旧の部品:下が新品」

名 前:舟橋 淳一(ふなはし じゅんいち)

出身地:愛知県
趣味:機械いじり・日曜大工・ネット検索
分野名:呼吸器外科学分野