高井 俊行
Toshiyuki TAKAI
 

音を揺らすことの魅力

-ヴィブラートを攻略せよ-
 


ピアノ。鍵盤を叩くとポーンと小気味好い音が鳴ったあと,サステインペダルを踏まないかぎり減衰して空気に溶けて消えて行きます。ヴァイオリンなどの弦楽器は弦を弓毛で擦るわけですが,音の強さやニュアンスをコントロールできるため,よく「音を創る楽器」と表現されます。

音を創る上で,聴く人の心に響かせる素敵な技のひとつに,音程をゆったりと,あるいは急速に揺らすヴィブラートがあります。ヴィヴラートで楽器の共鳴を自由自在に,曲のポイントポイントで増幅できるようになるとプロっぽい音になってきます。ところがこの初心者にとって憧れの技術は習い始めて1年や2年ではマスターできない,いわゆる「壁」です。そして先生に就いて習っていても3年経ったら教えてもらえるわけでもなく,テキストに詳細なノウハウが出ているわけでもないのです。また多くの場合,あるとき突然できるようになる種類の技術でもどうやらないようで,初心者が苦しむ「音程」とともに,憧れの揺れる音を簡単には手に入れられない壁を目の当たりにしてヴァイオリンの難しさを実感する要因になります。

実は私はヴァイオリンを習い始めてたった3ヶ月の時点で,当時の先生に無謀にも「先生,ヴィヴラートを教えてください!」と直訴しました。すると先生は(しょうがないわね〜 苦笑)という顔をしながらも,『ヴィヴラートはこのテキストの第3巻の終わりにようやく出てくる技術なのですが,今から練習するのであればこのように毎日,少しずつ練習してください』と,いくつかの練習手順と注意点を教えて下さいました。

この直訴が効を奏したか奏さなかったかは5年目になってもまだ答えを得ていません。

名 前:高井 俊行(たかい としゆき)

出身地:岡山県
趣 味:水泳,ジョギング,ピアノ,ヴァイオリン演奏活動
分野名:遺伝子導入研究分野