ル・シアン

母校のキャンパスに忠犬ハチ公像が作られて３年たちました。この秋田イヌの実話には、多くの美談が語られているのは周知の通りです。飼い主の上野先生が教鞭を執っていたこの学校には、ハチ号の臓器標本が大切に保管されています。これだけの有名犬ですから永眠時刻も明らかでして、１時間後には剖検されたそうです。当時は「飼い主」という言葉がなかったのか、「持主」として記録が残されています。

犬・猫が主体と思われがちな獣医さん、その前身は畜産です。驚くなかれ、獣医学科の教授陣の多くは畜産学科の卒業です。戦前の騎兵隊の馬学から発展して、戦後は家畜の生産性を上げるための実学になっていきました。僕が大学生だった90年代初頭は、ちょうど畜産学科から獣医学科となって4年制から6年制にシフトする変革期で、「動物のお医者さん」という漫画も出て、バブルも相まってペットブームの先駆けともいえる時代です。こんな山の手の外れにある本郷弥生地区。言問通りの坂を下りると根津、その坂をまた登ると右は上野桜木町、左は谷中霊園。30年前から変わらぬ通学路です。芸大の間を通って動物園を後ろに西洋美術館を左に見て歩けば、もう上野駅公園口。仙台へのアクセスは抜群です。

純血種もいいですが、自分は雑種犬が好きです。丈夫で何よりも表情がわかりやすい。雑草のように強く生きたいという憧れがあるのかもしれません。