冲永 壮治
Shoji Okinaga
 

点を線で結ぶ科学


 


点を線で結ぶ科学というと何を思い浮かべますか?私がまず思うのは細胞内のシグナル伝達です。例えばサイトカインが細胞表面のリセプターにくっついて、その信号が核まで行って転写がオンになる経路。クロストークを交えたあの複雑な経路を明らかにするには、一つ一つセカンドメッセンジャーを同定して線で結んでいかなくてはなりません。地道な作業ですが、その成果が今や分子標的薬として医学界に大変革をもたらしていることは周知の事実です。留学時代に私もその辺りの研究をしておりまして、医学の発展にどれだけ貢献できたか…①計り知れない、②疑問である。さてもう一つ、点を線で結ぶ科学ですが写真をご覧ください。写っているのはコクガンという文字通り黒い雁で、宮城県の漁港で撮りました。足輪をしていたので、その記号を照合してもらったところ、足輪はアラスカのユーコン川の河口で付けられたものでした。ツンドラ地帯で繁殖を終えたガン達が8月頃、一時飛べなくなるのを利用して、捕まえて足輪を付けるのです。このように個体識別することで様々なことを知ることができます、例えば渡りのルートとか。この場合、足輪を付けるだけではデータにはなりません。世界各地でその足輪を見つけようとする人達が必要です。発見されると地図上にその場所がプロットされ、それが線で結ばれて渡りのルートが解明されるのです。私は冬季にはコクガンを観察するようにしていますが、これがなかなかいいものでして、「バードウオッチングしてきます」ではなくて、「ちょっとサイエンスしますので」と言って家を出ることができます。(正解:①)

名 前:冲永 壮治(おきなが しょうじ)

出身地:東京
趣味:介護予防
分野名:老年医学分野(准教授)