まずはアジアで第一歩 

佐藤 悠子
臨床腫瘍学分野
 

アジア太平洋ホスピス会議で国際学会に初参加。


2015年5月1日~3日に台湾で開催された第11回アジア太平洋ホスピス会議(APHC; Asia Pacific Hospice Conference)に参加しポスター発表を行なった。今回のAPHCは「緩和ケアの転換」(Transforming Palliative Care)をテーマに、現地の文化、風俗、国民性など密接な関わりを持つ緩和ケアの今後のあり方を探る会議であった。参加者はアジア各国から、医師に限らず、看護師、ソーシャルワーカー、宗教家、NPO、ボランティア等1,315名が集まった。

私は臨床腫瘍学分野に所属し、終末期がん医療の質評価方法の確立をテーマに研究している。本研究所が取り組む様々な研究の結果、近い将来にがんの治癒や制御が望まれるが、残念ながら現在は日本の3人に1人ががんで死亡している。そのため今この瞬間も、「緩和ケア:生命を脅かす疾患による問題に直面している患者およびその家族のQuality of life を改善するアプローチ(WHO, 2002)」は、多くのがん患者で求められる。

私は、この緩和ケアが十分に行われているのかどうかを、医療ビッグデータの一つである診療報酬明細書等のデータから評価することを研究テーマにしている。APHCでは、単施設での質評価予備調査の結果をポスターにて発表し、他国で同様の研究に関する情報収集や意見交換等を行うことができた。

国際学会への参加は、今回が初であり英語のコミュニケーションには不安があった。しかし、世界の聴衆をイメージしてのポスター準備を通して、調査結果の解釈を深め表現を洗練することができた。また、日本人と同じように英語を外国語として使っているアジアの人々との交流は、英語恐怖症の克服にもなり、次の国際的舞台へのモチベーションになった。

学術的な面だけではなく、同じ志を持ち各国で努力している他の参加者との交流もあった。上海からの同年代の参加者と知り合ったが、彼女は医療者だけでは不足する終末期ケアを行える人材育成を行うNPOの代表を務めているそうだ。最終日には、彼女と会議の感想を述べ合い「keep going! ガンバロウ!加油!」と励ましあって別れた。次にまた会える日に向けて、それぞれの場所で一生懸命に努力することが大切だと強く感じた。

最後に今回のAPHCでの発表は、東北大学加齢医学研究所研究助成を受け実現した。快く送り出して頂いた石岡先生や医局員、研究を御指導頂いている緩和ケア看護学分野の宮下先生、医療管理学分野の藤森先生にこの場を借りて感謝したい。

画像:ポスター発表の様子(上)/ Gala dinner で歌を披露する台湾チーム(下)

名前:佐藤 悠子

所属:臨床腫瘍学分野
(医学系研究科 医科学専攻 博士課程4年)