学会発表とパレード 

林 剛平
病態臓器構築研究分野
 

学会発表を終えて外に出ると、晩夏夕暮れのDiagonal Streetは、
赤と黄色の衣装を着て行き交う人々で埋め尽くされていた。


2014年9月11日、バルセロナにおいて二つの場面で、私は“国際化”と言える経験をしました。一つは、学会発表です。学会はICRER2014(国際環境放射能研究会)というもので、ここで私は、福島事故の生物影響を日本から来た見習い研究者として発表しました。国際学会は否応なく、自国の状況や文化を背景に他国の研究者と触れあい、交換を行える絶好の機会です。もう一つ、バルセロナの町はカタロニアを祝うパレードでした。極東アジアから来た外者として、大人数の地元民の表現に深い印象を受けました。

学会では、福島第一原発事故後の飯舘村におけるイネへの環境影響について発表しました。ストレス関連遺伝子の発現変化があったという発表に、オゾンによるストレスは考えられないのか?RNA発現量の変化が線量依存的でないのは何故か?と的確な質問があり、発表後話しかけてきたDr. Neilは、「物理屋としては低線量γ線照射によって直接、ROSが発生することは考えられないって論文を書いたばかりだから読んでみて」と、自身のポスター発表を説明してくれました。間接影響であれば、何が受け手になっているのか、物理学と生物学を繋ぐ研究が必要だ、等話し合いました。

学会発表を終えて外に出ると、16時頃でバルセロナは日没まで後3時間といったところ。晩夏夕暮れの日射しの中、Diagonal St.(対角線通り)は、赤と黄色の衣装を着て行き交う人々で埋め尽くされていました。

メトロで同乗した人に聞くと、「390年ほど前、カタロニア地方は独立していたんだ」その人の赤と黄色のTシャツには9.11→11.9と書かれており、その意味を聞くと「9.11はカタロニアの祝日で、11.9には国民投票があるのさ」Referèndum d’autodeterminació de Catalunya この最初の単語をrefreedomと解釈し、€のアイコンなども合わせ見て、“€圏から独立”を問うのかと理解しました(後で調べてみると、国民投票referendum。freeではなくreferが語根でした)。夕日の色、土壁と漆喰の色によく合う多様な組み合わせの赤と黄色の衣装、踊り、音楽、町のメインストリートを埋め尽くす人々に祝祭されるパレード、そして住民投票に向けたデモンストレーションが同時に表現されていることに高揚感と、朗らかな気分を覚え、ネクタイを緩めて一緒に歩きました。市民が集まり表現行為を行う際、季節の陽気を楽しむ祝祭性に文化を感じました。

2015年5月には当研究室(加齢研病態臓器構築研究分野)が、国際放射線学会(ICRR2015)のサテライトミーティングとして、放射線照射実験や被ばく事故による生物影響を解析するために収集された病理標本に関する第一回国際シンポジウムSTAR2015を京都で主催することになりました。今回の学会発表の経験は、人を迎える上で大変参考になる経験となっています。

最後に、ICRER2014への参加は、平成26年度 加齢医学研究所研究助成により実現しました。初めての渡欧の機会を与えてくださいました川島隆太所長、福本学教授、並びに支えてくださりました研究室のみなさま、そして家族と友達に、この場を借りてお礼を申し上げます。 

画像:バルセロナ(上)/ Diagonal Street(下)

名前:林 剛平

所属:病態臓器構築研究分野
(医学系研究科 医科学専攻 博士課程2年)