米国での新たな挑戦 

國安絹枝
分子腫瘍学研究分野(博士4年)
 

わたしは、ロビンソン・クルーソー


この度、日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラムに採用していただき、2018年1月6日から4月12日まで米国ニューハンプシャー州Geisel School of Medicine at Dartmouthへ短期留学をしましたので、ご報告いたします。

約33時間のフライト後、疲労困憊の状態で人生初の米国の地に降り立ちました。記録的な大雪に見舞われたボストンの街では、街全体が氷河期にでも突入したかのような自然の底知れぬ脅威と美しさが共存しているようでした。その日は、ボストンのホテルへ向かい倒れこむように眠りました。深夜、けたたましいサイレンの音に叩き起こされ、『火事です。直ちに避難してください!』という機械音が耳に飛び込んできました。部屋が23階であることを思い出し絶望しました。しかし、生き残らなくては!という本能と同時に、部屋に入った時に確認しておいた避難経路の地図が脳裏をよぎり、一目散に非常階段へ向かいました。結局、凍結して破損したスプリンクラーの誤作動が原因とのことで無事でした。こうして、強烈な洗礼を受けるとともに、私の米国での研究生活がスタートしました。

大学のあるハノーバーの町は、文字通り銀世界で外は-20℃になる日もありますが、町の人々は暖かく素晴らしいところでした。今回私を受け入れてくださった、Duane A. Compton教授の研究室は染色体分配に関わる数々の分子基盤を解明し、近年ではがんにおける臨床応用の研究も行っており、まさにトップレベルの研究室です。学生たちは各々に独立したテーマで実験を進め、それぞれが自分の研究に対する明確な世界を持ち、その姿勢には大変感化されました。ここでは生活、研究の双方において0からのスタートであり、自分の力が試されます。様々なトラブルが降りかかる日々でしたが、幸運にも多くの人々の助けもあり、なんとか自分で切り抜ける術を身につけました。また、分野を問わず多くの研究者の方々にお会いする機会もあり、米国でのネットワーク作りも肌で感じて学ぶことができました。短い期間でしたが、今回の滞在で学んだことは私にとって今後の研究生活を続けていくための、とても意味のある一歩になりました。

最後に、今回の滞在を快諾してくださった田中耕三教授及び、受入先のDuane A. Compton教授、日々サポートしてくださった多くの方々に心より感謝いたします。

名前:國安絹枝

所属:分子腫瘍学研究分野
(医学系研究科 医科学専攻 博士4年)