バンクーバーで得た感情 

松平 泉
機能画像医学研究分野
 

意欲と感謝と愛郷心


2017年6月、カナダはバンクーバーで開催されましたOrganization for Human Brain Mapping(OHBM)にポスター発表者として参加して参りました。OHBMはヒトを対象とした脳科学研究における最大の国際的学術集会です。実に多様な分野の研究者が集い、各分野の最新の知見について意見を交わし合います。自身の専門分野とは一見異なる分野の講演から、己の研究にも応用可能な知見を見出し、新たな研究の着想を得ることができました。また、優れた口頭発表・ポスター発表を拝聴したことで、自分が研究者としてまだまだ未熟であることを再認識致しました。自分の伸び代を信じ、今後とも精進を重ねる所存です。

国際学会参加は、誰しもに均等に与えられた機会ではありません。学生の研究活動を支え促進してくださる加齢医学研究所という環境があるからこそ、私は今回のような有意義な経験を積むことができます。川島隆太所長、瀧靖之教授をはじめ、日頃より多大なご支援をくださる全ての方々に、心より感謝致しております。

ところで、私にとって今回のカナダ出張は、初めて一人で飛行機に乗り、初めて一人で異国の街を歩く旅でもありました。日頃は地元仙台で母と共にぬくぬく暮らしている箱入り娘にとって、この旅は不安以外の何物でもありませんでした。淋しさのあまり、めそめそと泣きながら日本を発ちました。上記の通り、学会そのものは大変有意義な時間でした。しかし、バンクーバーの雰囲気や食事にはなかなか馴染めず、日本が、仙台が、自宅が、恋しくて仕方ありませんでした。

待ちに待った帰国後、故郷の素晴らしさを実感致しました。食事は美味しい、御手洗は綺麗、ホスピタリティは充実、家屋には内と外の概念がある、大切な家族がいる…嗚呼、私の故郷仙台は、なんて美しく愛すべき街なのでしょうか!

脚本家の宮藤官九郎氏が紡いだ劇中に「ここ(故郷)が一番良い場所だと確認するために海に出る」という台詞があります。ホームシックと闘ったこのカナダ出張によって、私は世界中で仙台ほど良い場所はないと確認することができました。世界で活躍する研究者になるためには、故郷を愛する感情は不適切なのかもしれません。しかし私は、だいすきな日本、だいすきな仙台、だいすきな家族がいるからこそ、仕事に励むことができます。自分が安心して日常を生き抜ける場所に気がつくことも、海を渡って広い世界を見る意義の一つであると思います。だから私は今後も、不安を拭いきれずとも前向きに、「国際化」に挑戦していく所存です。

画像:学会会場内に浮かんでいた地球(上)/ バンクーバーの街中の教会(下)

名前:松平 泉

所属:機能画像医学研究分野
(医学系研究科 医科学専攻 博士課程2年)