特任教授(研究) 高井 俊行
助教 与謝 玲


免疫抑制レセプターによる免疫関連疾患の制御機構の解明と創薬

過去 25 年間の研究内容としては一貫して免疫制御レセプターのはたらきをアレルギーや自己免疫疾患、遺伝性疾患との関係において解析して参りました。この間、抑制性 Fc レセプターや独自に発見した新しい抑制性レセプター PIR-B の機能が不十分になることが、全身性エリテマトーデス(SLE)に代表されるような自己免疫疾患の素因となることを報告しました。またミエロイド系細胞に発現する LILRB4 という抑制性レセプターが SLE 患者の自己抗体を産生する病原性プラズマセル表面に異所性に高発現するという知見から、LILRB4発現が病原性を持つ意外な一面も大学病院の先生方との共同で報告しました。このような免疫機構の変調が骨形成や認知症にも関与する可能性を示すこともできました。

現在は、がん・SLE・神経変性疾患の克服に向け、私たちの研究の総仕上げとして制御レセプターを標的とした創薬研究に注力します。たとえば負の方向への免疫制御は、生体が本来持っているがんに対してはたらく免疫を弱めるという「免疫チェックポイント」のコンセプ
トが指摘されていましたが、これを阻害すると実際にがんに明確な治療効果が見られることが実証され臨床応用されています。私たちの研究していた LILRB4 もがん免疫に関与するのではないかという単純な発想で調べてみますと、明らかにこれを阻害するとがん免疫が増強しました。また私たちは独自に、20 年ほど謎のまま残されていた LILRB4 の生理的リガンドタンパク質が、フィブロネクチン N 末端 30 キロダルトン(FN30)であることを突き止めました。私たちは FN30 と LILRB4 の結合阻害ががんや SLE の抗体医薬として社会実装される可能性に期待して特許を申請し、LILRB4 抗体医薬を実際にがん患者さまにお届けできる日が来ることを切に願っています。



図:免疫チェックポイント LILRB4 は細胞外マトリクスであるフィブロネクチンと結合し、
インテグリンの活性化と炎症を抑制する

主な研究テーマ

・LILRBの生理的リガンドの探索
・免疫チェックポイントとしてのLILRBの機能解析
・免疫チェックポイント阻害抗体医薬の開発

参考文献

1. Itagaki F et al. Fibronectin on target cells attenuates natural cytotoxicity of NK cells via myeloid immune checkpoint ILT3/LILRB4/gp49B. Int Immu (2023) 35, 339.
2. Itoi S et al. Myeloid immune checkpoint ILT3/LILRB4/gp49B can co-tether fibronectin with integrin on macrophages. Int Immu (2022) 34, 435.
3. Takahashi N et al. Co-localization of fibronectin receptors LILRB4/gp49B and integrin on dendritic cell surface. Tohoku J Exp Med (2022) 257, 171.
4. Su MT et al. LILRB4 promotes tumor metastasis by regulating MDSC-mediated immunosuppression and inhibiting anti-tumor exosomal miRNA secretion. Oncoimmunol (2022) 11, 2060907.
5. Su M-T et al. Blockade of checkpoint ILT3/LILRB4/gp49B binding to fibronectin ameliorates autoimmune disease in BXSB/Yaa mice. Int Immu (2021) 33, 447.

研究キーワード

免疫抑制、免疫チェックポイント、がん免疫療法、自己免疫疾患、アルツハイマー病