スマート・エイジング(健康長寿の実現)を目指す
本研究所の前進である抗酸菌病研究所は、1941年、東北大学では二番目の附置研究所として、結核とハンセン病の克服を目的に創立されました。1993年には、加齢医学研究所への改組がなされました。「加齢」とは、生命の誕生から発達、成熟、老化、死に至る時間軸に沿った現象のことです。加齢医学では、加齢の制御機構と、加齢関連疾患を研究します。2009年には、文部科学省より「加齢医学研究拠点」として正式に認定されました。
現在、我が国は高齢者率25%を超える他に類をみない超高齢社会に突入しています。少子化に伴う労働人口の減少も加わり、健康な社会を維持し続けるためには、喫緊の対策が必要であることは自明です。また、こうした高度高齢化社会への対応は、先進国を中心に各国共通の課題として認識されています。私たちは、超高齢社会においても、個人や社会がいつまでも健やかで穏やかであり続け、そして活力を持ち続けるためには、「個人は、時間の経過と共に、たとえ高齢期になっても、人間として成長でき、より賢くなれる、社会は、より賢明で持続的な構造に進化する」ことが必要であると考えています。こうした考えを「スマート・エイジング」と呼んでいます。
加齢医学研究所は、複雑なひとのエイジングのしくみを、分子生物学的手法を用いた遺伝子や細胞の研究から、動物実験による個体レベルの研究、さらにヒトを直接の対象とした研究まで、多階層的な医学研究を包括的に扱っている世界でも有数の研究所です。私たちは、スマート・エイジング、特に個人の健康長寿を実現するために、全ての人が高齢期を積極的に受容しイキイキと社会で活動をし続けることを可能とするための医学的な支援や方策を、世界に向けて超高齢社会に対応するロールモデルとして示し、世界を先導する研究拠点となることをめざします。
加齢医学研究所長 川島 隆太