細胞分裂期進行のブレーキシステム
‐分裂期キナーゼの連携による正確な染色体分配を保証する
しくみ‐

 細胞分裂期での次世代への正確な染色体分配は、分裂期キナーゼと称される一群のリン酸化酵素と、それと逆の作用をもつ脱リン酸化酵素の働きのバランスによって保証されています。東北大学加齢医学研究所分子腫瘍学研究分野の池田真教(いけだまさのり)助教と田中耕三(たなかこうぞう)教授は、ヒト細胞において、分裂期キナーゼPlk1が脱リン酸化酵素の作用を妨げ、染色体分配の異常に応答して分裂期の進行を停止させる分裂期チェックポイントの維持に重要な役割を担うことを明らかにしました。染色体分配エラーを防ぐこのブレーキシステムは、別の分裂期キナーゼMps1の作用により活性化することが知られていましたが、今回の結果から、Plk1はリレーでバトンを受け取るようにMps1の機能を引き継ぎ、2つのキナーゼが連携して正確な染色体分配の進行を保証するというモデルが考えられました。
 多くのがん細胞ではPlk1の高発現が認められるため、Plk1はがん治療の分子標的の一つとして考えられています。したがって、今回の発見はPlk1を標的とするガン治療の有効性を評価する上でも重要であると考えられます。
本研究の成果は平成29年8月18日に国際科学誌Scientific Reportsにオンライン版で掲載されました。

加齢研ニュース_池田

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東北大学加齢医学研究所
分子腫瘍学研究分野
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