染色体の誤った結合を“ふるい落とす”
染色体数を正確に保つための新たなしくみの発見

【発表のポイント】
● 細胞分裂の際、染色体が紡錘体上で反復運動(オシレーション)を行うことによって、微小管との誤った結合を解消し、染色体数の異常が起こるのを防いでいることがわかりました。
● がん細胞では、染色体オシレーションが減弱しており、これががん細胞でよく見られる染色体異常の一因ではないかと考えられます。

【概要】
染色体数が細胞分裂を通じて正確に保たれるには、紡錘体注1上で染色体が微小管と正しく結合する必要があります。東北大学加齢医学研究所・分子腫瘍学研究分野の家村顕自助教、田中耕三教授らの研究グループは、国立遺伝学研究所の夏目豊彰助教・鐘巻将人教授、畿央大学の前原佳代子教授と共同して、染色体オシレーションとして知られている染色体の紡錘体上での反復運動が、染色体と微小管との誤った結合を解消することで、染色体が不均等に分配されるのを防いでいることを明らかにしました。がん細胞株では正常細胞株と比較して染色体オシレーションが減弱しており、このことが多くのがん細胞で見られる染色体異常の一因ではないかと考えられます。
本研究成果は、5月14日に学術誌Journal of Cell Biology誌に発表されました。

tanaka

図 染色体オシレーションによる動原体と微小管の誤った結合の解消
(左)動原体が紡錘体極に近づくと、Hec1が紡錘体上のAurora Aによってリン酸化され、誤った結合が解消される。(右)がん細胞では染色体オシレーションが減弱しているため、誤った結合が解消されず、染色体の不均等な分配が起こる。

【補足説明】
注1 紡錘体: 細胞分裂の際に染色体を分配するための構造物であり、2つの中心体が極となって、そこから伸びた微小管が中央で重なり合うことで紡錘形をとる。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】
東北大学加齢医学研究所
教授 田中 耕三
E-mail: kozo.tanaka.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
tel: 022-717-8491