田中 耕三
Kozo TANAKA
 

車窓の風景

流れる景色を見ながら
 


仙台に住んでほぼ毎週新幹線に乗るようになって10年になる。見るとはなしに窓の外を眺めているうちに、パッと目が覚めてもどこを走っているか見当がつくようになった。毎週のように南下と北上を繰り返していると、季節の移り変わりをつぶさに感じることができる。3月から4月にかけて、桜前線が少しずつ仙台に近づいて来るのを見ると心が弾む。しかしこの季節の変わり目は、ダウンジャケットを着込んで仙台を発つと、東京では場違いになってしまう悩ましい時期でもある。もう何百回も乗っているが、大きく遅れたことは10回もないと思う。が、それだけにいざ遅れると、ありがたみがよくわかる。7年前の大震災の時は、仙台−福島間が再開するのに1ヶ月半かかった。福島から仙台まで在来線に乗ってみて、こんなに遠かったのかと実感した。当時は花見どころではなかったが、大河原駅から船岡駅まで線路沿いを埋め尽くす一目千本桜が、いつもと変わらず満開に咲き誇っている光景は忘れられない。今年の冬はこの10年でもひときわ寒く感じられるが、雪を頂いた吾妻や那須の山々を見ながら、またもうすぐ春の兆しを車窓から見つけるのを心待ちにしている。

次回は腫瘍生物学の千葉先生です。

名 前:田中 耕三(たなか こうぞう)

出身地:鹿児島県
趣 味:犬の散歩
分野名:分子腫瘍学研究分野