山家 智之
Tomoyuki YAMBE
 

タバコをやめるのは簡単です。

大学院時代は、結局、ずっと、病棟から離れたことがありませんでした。

 


むかしむかし、あるところに、おじいちゃんとおばあちゃんが、すんでいました。
お爺ちゃんは、ある日、芝刈りに・・・
ではなくて、入院していたお婆ちゃんの、見舞いに病院に来ていました。

僕もまだ駆け出しの時代で、何回かご説明させていただきしましたが、なかなか不整脈が治まらず、アブレーションもない時代、
ちょっと入院が長引いていました。

なかなか愛妻家のお爺ちゃん、
毎週、日曜になると、午前中にきちんとお婆ちゃんのお見舞いに来ます。

その日もテコテコ階段を上がってくるのが見えますが、健康のため・・と、循環器のある六階まで階段を上がることにしているそうで、登りきったところで、おもむろに・・・「ふ~!」と、外の景色を眺めつつ上手そうに煙草を一服。

(昔は病院も、禁煙ではありませんでした)

目の端に見えながらカルテを書いていると、看護婦さんが
「先生!!!」と、悲鳴?
?・・・と、廊下を見ると、
目の前でお爺ちゃんが倒れて苦しがっているではありませんか???

!!!・・・胸を押さえて苦しがっているので、
「心電図!」と、12誘導を見ると、きれいに、Ⅱ、Ⅲ、aVfのSTが・・・
「間違いない心筋梗塞だ、すぐカテ室に連絡して!」

オーベンに連絡して、緊急で技師さんを呼び、ストレッチャーで運んで、カテ室の電源を入れて・・・昔は全部一人でやらねばなりませんでした。
造影を始めるあたりでオーベンの先生も到着!
「あ、やっぱり右だね・・・すぐPTCA! バルーン用意するから、山家君、まず、ニトロ冠注!」
「はい」
血管形成術の前には、冠動脈を十分に緩めなくてはなりませんが、ニトロの注入の際に少し冠動脈も見えます。

????・・・「・・・え?」と、
私が言うと、気の荒いオーベンの先生。
「だから~・・・あんなにカテ中に、あ!とか、え?とか言うなって教えたろ!」
と、怒り出します。
・・・ところが、患者さんの方が
「あ?・・・・治ったみたいです。」

???
・・・造影してみると、確かにすっかり開通しています。

なんと・・・六階までの運動負荷の後、たばこの一服で、
見事に、右冠動脈が攣縮を起こして閉塞し、心筋梗塞になっていたのでした。
私のニトロの冠注一発で、攣縮が取れた、もともとは、狭窄がない症例。

・・・タバコをやめるのは簡単です。一回、心筋梗塞になればいいんです。

次回からリレーブログ六巡目に入ります。お楽しみに。

名 前:山家 智之(やんべ ともゆき)

出身地:宮城教育大学付属小学校、附属中学校、仙台一高
趣 味:気が付くと年間、数百冊くらい本を買っています。趣味で「ブクレコ」というHPに書評を上げていましたが、結構、いろんな本をボロクソに批判していたら、先日、うちで主催した「日本生体医工学会」の若手のナイトセッションで、「大会長がこんなボロボロの書評を書いている?」と、ネタにされて盛り上がってしまいました。
が、何と、先月、いきなりHPのサービスが停止になり、ちょっと悲しい思いをしています。
分野名:心臓病電子医学分野