山家 智之
Tomoyuki YAMBEe
 

「報告しておけば、世界最初だったのに・・・」

「何じゃ? このタコ壷みたいなのは?」と、
カンファレンスで話題になったのは、1988年でした。

 


「何じゃ? このタコ壷みたいなのは?」と、
カンファレンスで話題になったのは、1988年でした。
当時、現在の宮城県立循環器・呼吸器病センターに在籍していましたが、オーベンの先生が左室造影を供覧しながら、
「なんですかね?これ?」の声に
「再開通したOMIですかね〜」
「スパズム由来とか?」と、
色々意見がでましたが冠動脈は正常。患者さんも元気そうです。
心臓外科の先生も「ん〜こんなの見たことないなあ〜」
放射線科の先生も「ん〜見たことも聞いたことないですねえ」
小児心臓の先生も「わかりませんねえ~」
左室の尖端だけが収縮性が落ちたその姿はまさしく「タコ壷!」

僕も学位を出して、そろそろ臨床論文も書いていたので、症例報告だけでもすれば良かったんですが、実は、当時は現在のプラークラプチャーの原理すら明らかでなく、心筋梗塞自体が原因不明と言われていました。
なので、報告しても、新しいかどうかもよくわからない時代。
ネットもないこの時、東北大の図書館に、戻って調べる時間も金もありませんでした。

「たこつぼ型心筋症」と、いう概念が提唱されたのは90年代。
僕らが早く見つけていたのに・・・
何も、報告もせず、
「世界最初の発見のチャンス」を、完全に逃したのでした。

「Takotsubo」は、日本語がそのまま病名として認められ。現在、東日本震災でも、ストレスによるたこつぼ心筋症が話題となり、学会でも重要な概念のひとつなのに・・・

言い訳にもなりませんが、その時は学位を書きながら、午前中外来病棟午後カテ夜論文とかで生まれたばかりの長男の顔を見る時間もありませんでした。
と、これを書いていると、その長男から
ポーンと「俺、明日学会で喋るわ!」とライン。
「へえ〜何しゃべんの?」
「たこつぼ心筋症の一例!」
わぉ! 親の仇をとってくれたかな

東北大学医学部寄宿舎の「昭和舎」では、毎年、どんと祭に参加しました。
1985年の裸参りでは、皆で、凍えて帰ってくると、留守番役の後輩が
「すんません! お風呂壊れました!」と。
「バカも~ん!」等と、理不尽な声が上がったものです
ストレスがたこつぼ心筋症の元。と報告されています

次回からリレーブログ五巡目に入ります。お楽しみに。

名 前:山家 智之(やんべ ともゆき)

出身地:宮城教育大学付属小学校、附属中学校、仙台一高
趣 味:「Born to run」や「 Go wild」を、読んで、最近、トレイルランに凝っています
分野名:心臓病電子医学分野