田中 耕三
Kozo TANAKA
 

失敗は成功のもと

実験を始める前によく確認しましょう
 


加齢研に来て半年あまり経った2007年の冬、私はそれまで使っていた酵母に加えて、ヒト細胞を使った染色体分配の研究を始めました。手始めに、紡錘体チェックポイントのタンパク質であるMad2と結合する新しいタンパク質を見つけることにしました。いろいろな先生にやり方を教わりながら、何とか新しいタンパク質を見つけましたが、なぜかそのタンパク質と結合するはずのMad2を抗体で検出することができません。よくよく調べると、実はヒトにはMad2という名前のタンパク質が2つある(Mad2L1とMad2L2)ことがわかりました。このうちMad2L1が本来のMad2で、私が調べていたのはそれとよく似ているが別のタンパク質であるMad2L2でした。このようなことは本来最初によく確認しておくべきことで、あってはならないことです。ただ結果として見つかったこの新しいタンパク質(CAMPと名付けました)は、染色体分配に関係していることがわかり、論文として発表しました。一方当初の目的であったMad2L1と結合するタンパク質も調べてみましたが、新しいものは見つかりませんでした。その後CAMPは、染色体分配以外にも様々な機能をもつことがわかってきています。最近では小児の知的障害でCAMPの変異が見つかっており、このタンパク質との付き合いはまだまだ続きそうです。

次回は腫瘍生物学の千葉先生です。

名 前:田中 耕三(たなか こうぞう)

出身地:鹿児島県
趣 味:娘と散歩、歴史小説、ウォーキング
分野名:分子腫瘍学研究分野