杉浦 元亮
Motoaki SUGIURA
 

不審物と不審者

核技術開発に関わる国際スキャンダル
 


「撮影を止めなさい」
巨躯のドイツ人警備員が2名、私の目の前に立ちはだかった。
「何をしている、その物体は何だ」
相当ヤバいことになった。私は覚悟を決めた。

留学先のユーリヒ研究センターでの出来事である。我々は、ある物体を2回目に目撃したとき、その物体を最初にどこで目撃したかを思い出す。私は、その過程を脳活動で証明しようという実験を準備しているところであった。
被験者に、ある身近な場所に物体Aが置いてあるのをコンピューター上で目撃させる。物体Bも無背景の画像として同様に目撃させる。あとで物体AとBをもう一度見せて、物体Aを見ている時にだけ「身近な場所の認知に関わる脳領域」が活動すれば、「最初に目撃した場所を思い出した」と推測できる。「物体」は被験者が生まれて初めて見る、印象に残る物でなくてはならない。

私は、同じ研究センターの別エリアで働く被験者のために、彼の勤務エリアで撮影をしていた。そこは研究所の核技術に関わる研究エリア(当然写真撮影禁止)であった。そこにビビッドな原色の現代アートのような物体を置いて、写真撮影をしているひげ面のアジア人を発見した警備員の心中を思いやると、同情を禁じ得ない。すみませんでした。

次回は、機能画像医学の瀧先生です。

名 前:杉浦 元亮(すぎうら もとあき)

出身地:東京/神奈川
趣 味:検討中
分野名:脳機能開発研究分野