田中 耕三
Kozo TANAKA
 

アイディアとは既存の要素の新しい組み合わせにすぎない

期待とは違う結果から発見が生まれる
 


右の動画は、出芽酵母で染色体が微小管にとらえられて紡錘体へと運ばれる様子です。酵母の染色体は本来紡錘体上に存在しているので、通常はこのような現象を見ることはできません。私はイギリス留学中に、染色体上のセントロメア(微小管が結合する部位)のはたらきを制御することによって、このように染色体が微小管にとらえられる様子を観察することに成功しました。この研究は、私が現在ヒト細胞で染色体分配の研究を行うきっかけになりました。

それだけでなく、この研究はタイトルにあるような2つの大事な教訓を与えてくれました。出芽酵母のセントロメアのはたらきを制御する方法はすでに開発されていましたが、私たちはそれを少し違った形で利用することで新しい現象を見つけることができました。しかし実はこの実験は、別の現象の観察に使えるのではないかと考えて始めたものであり、最初この現象を見た時には期待したような結果でなくてがっかりしてしまったものです。研究を始める前には、よく考えてなるべく成功の可能性の高いテーマと方法を選択しなければいけませんが、最終的な答えはしばしば予想外のものであるというのが難しくもおもしろいところです。

次回は腫瘍生物学の千葉先生です。

名 前:田中 耕三(たなか こうぞう)

出身地:鹿児島県
趣 味:娘と散歩、歴史小説、メダカの飼育
分野名:分子腫瘍学研究分野