川島 隆太
Ryuta Kawashima
 

こころの目を閉じる

触ることに集中をすると思わず目を閉じてしまうのは、
脳がこころの目を閉じた結果であることを発見

 


リレーブログも三巡目、この回のお題は、お気に入りの研究とします。これまでの研究者人生で発見した、他人の評価なんて関係ない、自分が強いこだわりを持った愛すべき自分の研究成果について語ってもらいます。

私は大学院時代よりヒトが考えたり、身体を動かしたりするときに、脳のどの場所がどのように働くのかを計測する研究を行っていました。当時、同様の研究は世界中で行われだしていましたが、いずれも計測中に行った思考や行為と、脳活動の増加の関連性を調べるものでした。スウェーデンのカロリンスカ研究所に留学中もそうした研究に没頭していましたが、ある日ふと、脳活動がどこかで増えるなら、代償的に減る場所もあるのではないかと考え、ラボのデータの再解析を行ってみました。

そうする と、触覚刺激に注意を向けている時に、大脳の視覚領域の活動が特異的に減少することを発見しました。そういえば麻雀で盲牌をする時に目をつぶるとの生活体験と解析結果がぴったり一致しました。こころの目が閉じる現象を発見したと大騒ぎをして、ボスやラボの連中に若干白い目でみられつつ、Positron-emission tomography studies of cross-modality inhibition in selective attentional tasks: closing the “mind’s eye”.というタイトルの論文にまとめ、愛すべき研究成果は日の目を見ることができました。今では、こうした研究では、脳の活動は増加だけではなく、減少(すなわち抑制)も調べることが常識となっています。

論文データ DOI: 10.1073/pnas.92.13.5969

次回は副所長の本橋先生です。お楽しみに!

名 前:川島 隆太(かわしま りゅうた)

出身地:千葉県千葉市 朝日新聞渡辺新社長は中学の同級生
趣 味:やっぱりバイク NINJA H2(改) 乗り回しています
分野名:脳機能開発研究分野