松居 靖久
Yasuhisa MATSUI
 

Don’t Push Me! が開いた、奇跡の扉

崖っぷちの底に潜む幸運を拾える奇跡は、
偶然と、ハングリーと、しつこさがもたらすのかもしれません。

 


25年ほど前に米国に留学中のできごと。発生研究の大御所、ブリジッド・ホーガンさんのもとで、なぜかやることになった発癌モデル・トランスジェニックマウスの研究が、2年ほどのノー・データの末にようやくかたちになった時、自分はやはり発生の研究をやりたいと思い、ブリジッドさんにそのように言いました。しかし色よい返事が得られないので、ディスカッションの折に触れて、発生の研究!と言い続けていたら、しまいに彼女の逆鱗にふれ、‘Don’t Push Me!’と言う怒鳴り声と共に、しばらくの冬の時代に突入してしまいました。しかし世の中、何が起こるかわかりません。

ある日、学会から帰ってきたブリジッドさんが、新しいサイトカイン遺伝子の発現解析の共同研究の話を持ってきてくれました。そしてそれが、生殖細胞の発生に関する3つの論文がトップジャーナルに出るという、一生分の幸運を使い果たすような奇跡の連鎖へと繋がっていきました。自分の力を超えた奇跡は、ハングリーと、しつこさが、気まぐれな運命の女神の首を縦に振らせた結果だったのかも知れないと、今は思います。

次回は代謝制御の山本先生です。

名 前:松居 靖久(まつい やすひさ)

出身地:東京都
趣 味:研究すること、工事中や新しい大型建築物を眺めること、鉄道に乗ること、写真を撮ること
分野名:医用細胞資源センター