本橋 ほづみ
Hozumi Motohashi
 

コントロールサンプルからの発見

ポジコン、ネガコンだったはずなのに、そこに意外な結果が。。。
 


実験を行うときは、どのようなコントロールを設定するかが重要です。私が行った実験のコントロールたちは、本来の役割に加えて、しばしば発見のきっかけを作ってくれました。今でも忘れられない「ときめく」瞬間を経験させてくれたコントロールは、大学院時代にRNaseプロテクションアッセイという実験で使用したマウス脳のRNAです。

大学院生だった私は、MafK遺伝子の転写開始点を決めるために、マウスの胎児と肝臓のRNAを使ってRNaseプロテクションアッセイを行いました。その際、脳でMafKの発現が高いことがわかったので、「ポジコン」として脳のRNAを合わせて調べました。ところが、ポジコンのはずの脳RNAではまったくバンドが検出できませんでした。当時、1つの遺伝子は1つの転写開始点を持つのが当たり前と考えられていました。もしかして、脳では胎児や肝臓とは別の転写開始点が使われてるってこと!?折しも、Gata1遺伝子が、造血細胞と精巣とで異なる転写開始点を有するという発見がNature誌に掲載されたばかりでした。世紀の大発見!と勇みたったのも束の間、あっという間に、複数の転写開始点をもつ遺伝子は稀じゃないということになり、科学の進歩の速さを思い知らされました。とはいえ、これは私の大事な、ちょっとほろ苦い「小発見」です。

次回は老年医学、荒井先生です。お楽しみに。

名 前:本橋 ほづみ(もとはし ほづみ)

出身地:生まれは鹿児島、育ちは仙台
趣 味:ウィンドウショッピング
分野名:遺伝子発現制御分野