海外での研究生活のあこがれ 

伊藤 甲雄
生体防御学分野(助教)
 

留学から、研究室を主宰するまでの話を伺って


私は、海外留学に興味があり海外での研究生活はどのようなものか、実際に海外で研究室を主宰している先生にお伺いしたいと思っていました。小笠原教授に伺ったところ、仙台出身で新進気鋭の研究者がいるとのことで、中村能久先生を紹介していただきました。

中村先生は、仙台出身で本学工学部をご卒業され、東京大学医科学研究所で医学博士を取得し、ハーバード大学に留学、その後に、現在のシンシナティー小児病院で、アシスタントプロフェッサーとしてご活躍されています。

中村先生のお話では、ハーバード大学に留学していた時には、研究室の教授から提示されたテーマであるII型糖尿病の研究を行っていたのですが、なかなか研究がうまくいかなかったそうです。夏に、教授が母国のトルコに帰国した1か月程度の間に、II型糖尿病は肥満と相関があるので、肥満が慢性炎症なのではないかとのアイデアを、簡単な研究計画書にして作成して見せたそうです。

ボスに見せたらしばらく無言だったので怒られると思ったそうなのですが、少しの沈黙後に、これをやってみようと言っていただき、とてもうれしかったとおっしゃっておりました。そして、肥満とプロテインキナーゼR(PKR)の関係が明らかとなり、肥満が慢性炎症を引き起こしているとの仮説を証明することができ、この結果が Cell誌に掲載されて一躍注目を浴びるようになったそうです。

このころ周囲には、同じ境遇の日本人博士研究員(ポスドク)も多数おり、よくポスドク同士で食事会など催して将来のことを話し合い、アメリカで研究室を主宰したいと強く思うようになったそうです。その後、肥満とPKRの仕事から内在性RNAが関与することが明らかとなり、慢性炎症のRNA worldへと研究を展開されています。

研究拠点はアメリカですが、日本のグラントであるJSTさきがけを取得されたり、現在では、NIHグラントRO1を取得されるなど、論文の業績もさることながら、研究費も確実に獲得されて、素晴らしいと思いました。アメリカでは、若手研究者を支えていこうとする風土が日本以上にあり、とても研究しやすいそうです。

このお話を伺って、ますます海外で研究してみたいと思いました。お忙しいところ加齢研にお越しくださった中村先生はじめ、このような機会を与えていただいた研究推進委員会の先生方に感謝申し上げます。

画像:中村先生の研究室(上)/ 中村先生の実験室(下)

名前:伊藤 甲雄

所属:生体防御学分野
(助教)