◇平成29年11月22日(水)加齢研セミナーのご案内
日時: 平成29年11月22日(水)16:30~18:00
場所: 加齢研 実験研究棟7階 セミナー室1
演題: 1. 16:30-17:15「上皮細胞のバリア機能の維持機構」
2. 17:15-18:00「代謝・炎症制御における多機能ペプチダーゼ・ナルディライジンの役割」
講師: 1. 東 智仁
2. 西 英一郎
所属: 1. 公立大学法人福島県立医科大学
2. 国立大学法人滋賀医科大学
担当: 堀内 久徳(所属 基礎加齢研究分野・内線8043)
要旨: 1. 細胞間接着装置は隣接する上皮細胞間を物理的に結びつけるとともに、細胞間隙を通じた水や物質の透過を制御することによって上皮のバリア機能を担っています。さらに3つの細胞が接する点には三細胞間接着が存在し物質の漏れを防いでいます。一般には細胞間接着は定まった静的な構造体と思われがちですが、実際には発生過程の形態形成や細胞分裂など、上皮細胞の運動や変形に応じて動的に再編成されています。私は、三細胞間接着を構成する分子機構の解明に携わってきました。また、アフリカツメガエル胚の分裂中の表皮細胞を用いたライブイメージングにより動的に形態を変化する細胞の中で細胞間接着が維持されバリア機能が保持される仕組みを明らかにし、細胞分裂後に三細胞間接着が新規に形成される過程を明らかにしました。本セミナーでは、上皮細胞のバリア機能が維持される仕組みについて三細胞間接着に重点をおいてお話ししたいと思います。

2. EGFやTNFαなどは、膜タンパク質前駆体として生成され、細胞外ドメインが切り出されること(細胞外ドメインシェディング)で活性化される。我々はメタロペプチダーゼ、ナルディライジン(NRDC)をHB-EGF結合タンパク質として同定し(EMBO.J,2001)、NRDCがHB-EGF、TNFαなどの細胞外ドメインシェディングを増強することを示した(JBC,2006、Nat. Neurosci. 2009、RMD Open 2017など)。一方核内では転写を調節しており(Nat Commun.2014、Diabetes 2016など)、NRDCが局在に応じた多機能性を有することを示した。NRDC欠損マウスは、髄鞘形成不全、低体温、インスリン分泌低下など多彩な表現型を呈し、発がん、炎症性疾患モデルにおいては疾患抵抗性を示した。本セミナーでは、NRDCの代謝・炎症制御における役割を中心に概説したい。