准教授 河岡 慎平



生体情報解析分野では、大規模データ解析を駆使して、がんによって個体が不調に陥るのはなぜか、日々のストレスと老化の関係はどのようなものか、デバイスの利用は生体にどのような影響をあたえるのか、といった問いに答えようとしています。

近年の技術革新により、生命科学・医学分野で得ることのできる情報の量は飛躍的に増えました。いまやゲノム全体の配列 (約31億文字) を知ることは難しくありません。ある細胞における2万種類以上の遺伝子の発現量や数百の代謝物の量を網羅的に測定することもできます。個々人が持つ背景情報 (年齢や性別、既往歴など) の蓄積にも目をみはるものがあります。

技術革新の一方で、新たな課題も生まれました。大規模なデータが得られても、得られた情報が何を意味するのかを解釈することが難しい場合があるのです。異なる階層のデータ同士 (たとえば遺伝子発現の情報と疾患の既往歴) を結びつけることが困難である場合も多々あります。解釈しやすいデータを得るためにはどうすれば良いか、得られた大規模データから有用な情報を抽出するにはどうすべきか、これらの基本的な問題を考えることの重要性が増しています。

生体情報解析分野では、実験デザイン、大規模計測、そして情報解析までを一貫して行うことで大規模データを最大限に活用する枠組みを構築することを図りつつ、以下に述べる生命現象を理解することを目指しています。すべてのプロジェクトに共通しているのは、大規模データ解析を駆使して生体の状態を理解しようとする点です。

(1) がんに起因する宿主の不調のメカニズムはどのようなものか。がんの本態に関する理解が進んだ一方で、がんがどのように個体を死に至らしめるのかはよくわかっていません。私たちは、多臓器に対する大規模データ解析と遺伝学を組み合わせ、この問題を解決しようとしています。

(2) 日々のストレスが疾患や老化に与える影響はどのようなものか。概日リズムの乱れなど、私たちが日常的に受ける「ちょっとしたストレス」が生体にどのように影響するのかを理解しようとしています。エンハンサーと呼ばれるゲノム領域 (遺伝子がいつ・どこで・どのくらい発現するかを決めるDNA領域) を活用しています。

(3) ロボットやアバター、デバイスの利用が生体に与える影響はどのようなものか。コロナ禍によってわたしたちをとりまく生活環境は一変しました。遠隔対話システムは今や私たちになくてはならないものです。ロボットやアバターの利用も増えています。さて、これらの新しいデバイスの利用は、生体にどのような影響を与えるのでしょうか?その理解に基づいてより良いデバイスを作ることは可能でしょうか?

これらの研究や私たちの考え方に興味のある方は、ぜひ当分野までご連絡ください。

参考文献)
1. Nat Commun 10, 2603. DOI: 10.1038/s41467-019-10525-1
2. Dis Model Mech 11. DOI: 10.1242/dmm.032383
3. Oncotarget 8, 34128-34140. DOI: 10.18632/oncotarget.16699