Takai

 

教授 医博 高井 俊行
講師 博士(医学) 乾 匡範
非常勤講師 博士(医学) 中村 晃
非常勤講師 博士(医学) 森本 素子
非常勤講師 博士(障害科学) 坂本 譲
助教 博士(医学) 伊藤 亜里
技術補佐員 飛内 章子
事務補佐員 中村 孝子



私たち遺伝子導入研究分野は加齢医学研究所の改組に伴って平成5年に新設されました。現在の研究室は平成9年10月に稼働を始めてからおよそ12年半経ちますが、東北大学の標榜する門戸開放・研究中心主義を念頭に置きながら、歴史や伝統に縛られることなく、以下のテーマのもと、自由で活発な研究活動を行っています。当研究室の様子をさらに詳しく知りたい方はこちら(http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/expimmu/index.html )を参照してください。

私達の研究目標は、Immunoglobulin-Like Receptor(IgLR)と称される免疫系の受容体 分子群(図1)、たとえばFc レセプター(FcR)分子群やPaired Immunoglobulin-Like Receptor (PIR)分子群などの遺伝子ターゲティングマウスの開発(図2)と生理機能の解明を通し、アレルギー、自己免疫疾患、癌、移植免疫病など、関連する疾患の発症機構を解明することであり、これらの治療方法の開発へ向けた新規な提案を行っていきたいと考えています。同時に、これらの研究を志す大学院生を広く受け入れ、私達の研究テーマを責任持って分担してもらうことで、研究者としての素養と実力を養ってもらいたいと考えています。

異物が侵入したときに生体が作り出す中和抗体と結合するFcRは、多様な構造を持った細胞膜上のレセプター分子群です(図1)。これらは特に炎症や自己免疫疾患の発症に関与していると考えられてきました。特にヒトで、最も微量でアレルギーを引き起こす抗体であるIgEは、そのレセプターであるFcεRIと結合し、抗原によって刺激されてアレルギー発症の引き金を引くことは良く知られている例です。私たちはこのように多様なFcRがどのように免疫系に関わっているのかを解明するために、FcRおよびそのサブユニット分子の遺伝子を破壊されたマウス、いわゆるノックアウトマウの作成を行い、解析しました。その結果、このように多様なFcR分子群は免疫系に対して活性化の機能をもつタイプと、逆に抑制機能を示すものとに大別され、免疫応答を正と負の両方向にうまく調節していることが分かり、このバランスが崩れるとがアレルギーなどの発症につながることが示されました。この正と負の制御様式はアレルギーのみならず自己免疫疾患においても機能しています。

PIRはFcR群と遺伝子レベルで親戚関係にある分子です(図2)。 PIRはアレルギーや自己免疫疾患などの発症機構にどのように関わっているのでしょうか?私たちの研究では、抑制性レセプターであるPIR-Bを欠損したマウスではTh2型の応答、つまりアレルギーを起こしやすい性質を持つことが分かりました。さらにわたしたちはPIR-Bの免疫制御機構を解析する中で,これがMHCクラスIという,自己のマーカー分子を認識していることを解明しました。一方,抗体を産生するB細胞には,抗原特異的な抗体を産生するB2細胞と,抗原非特異的な自然抗体を産生するB1細胞があります(図3)。とりわけB1細胞は自己組織にも反応する自然抗体を産生することがわかっています(図2)。このB1細胞において,わたしたちはPIR-Bが細菌やウィルスなどを認識するToll様レセプターからのシグナル伝達を抑制することにより,自己反応性を制御していることを明らかにしました(図4)。

ごく最近になり,PIR-Bは神経軸索伸長阻害因子群とも結合することが他のグループにより示され,PIR-Bによる制御機構は単に免疫系にとどまらないことが示唆されています。わたしたちは今後,FcγRIIBやPIR-Bなどの免疫制御機構の全容を解明し,この制御機構の利用による免疫病の克服に向けた研究を展開して行きます。

  Fig.1
図1.免疫系を正と負に調節する典型的なIgLR分子であるFc受容体の仲間
ヒトとマウスの代表的なFcR分子群とそのリガンドを模式的に表した。FcγRIIBは代表的な抑制性受容体であり、細胞内に抑制モチーフITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif) を持つが、かたや活性化型受容体は活性化モチーフITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)を持つサブユニットFcRγ鎖と会合する。
  Fig.2
図2. 免疫系細胞を正と負に調節するPIR分子群
ヒトのLILRおよびマウスのPIR分子群の構造を模式的に表した。PIR-Bは抑制性受容体であり、細胞内に抑制モチーフITIMを持つが、かたや活性化型受容体のPIR-Aは活性化モチーフITAMを持つサブユニットFcRγ鎖と会合する。
  Fig.3
図3. B細胞における免疫寛容
B細胞には,抗原特異的な抗体を産生するB2細胞と、抗原非特異的な自然抗体を産生するB1細胞がある。B2細胞は骨髄において、自己組織に反応しないように選別される(免疫寛容)。一方、B1細胞は主に腹腔や胸腔内に存在しており、自己組織にも弱く反応する細胞が分化してしまう。
  Fig.4
図4. PIR-BによるTLR9シグナル伝達制御機構
リウマチ因子(Rheumatiod factor: RF)は、抗体のFc部分に対する自己抗体で、主にB1細胞によって産生される。このRF産生細胞の活性化にはToll-like receptor (TLR)9からの活性化シグナル伝達が必須であることが判明している。PIR-Bに会合するSHP-1はToll-like receptor (TLR) 9によって活性化されるBtkのリン酸化を抑制することにより、リウマチ因子(Rheumatiod factor: RF)産生を制御している。