桜田 晃
Akira Sakurada
 

視野と感覚

内視鏡手術では良い視野を保つのも技術です
 


鏡には左右が逆になった像が映る。鏡を見ながら髪の毛の先を切るのは大変である。しかし不思議なことに上下の関係はそのままのように認識される。当たり前のことであるが、よく考えると釈然としない。先日、某人気テレビ番組(博識な5歳児が解説してくれる)で、このことが取り上げられていたが、まだ解明されていないということであった。

私の仕事のひとつは肺の手術である。最近では、内視鏡の映像のみを頼りに手術をする機会が増えている。内視鏡の担当の人は、手術の操作が違和感なくできるように、映像の上下左右が一定の方向になるように気を遣う。また、最近では3次元に見える眼鏡を使うこともある。現在の内視鏡は金属の棒のような構造で、視野の方向が固定されるため死角になりやすい場所が生じる。新幹線の座席から見上げると、荷棚の上が死角になっているのと同じである。近い未来には、任意の方向に屈曲し、視野の回転も自在行えるような内視鏡ができるかもしれない。荷棚を上からぐるっとのぞき込めるようになるイメージである。映画のマトリックスで、主人公たちのいる潜水艦に迫ってくる金属製のタコのような機械がある。無数の柔軟なアームが目や物をつかむ役割を果たすようになっている。手術用の内視鏡と器具はあんな形になっていくのではないかと思っている外科医も多いと思う。近いうちにそれを使いこなすことが求められるのかもしれない。ぼーっとしてはいられない。

名 前:桜田 晃(さくらだ あきら)

出身地:青森県
趣味:ジョギング
分野名:呼吸器外科学分野