冲永 壮治
Shoji Okinaga
 

東北大学植物園と木村有香先生のこと


 


東北大学植物園は青葉城の後背地に当たり、その一帯は城防備のために樹木伐採が禁じられていました。そのため自然度の高い森が保存され、現在では国指定天然記念物「青葉山」になっています。私は学生時代に東北大野鳥の会というサークルに所属していましたが、自然豊かな植物園は恰好の探鳥地でした。サークル活動の一つとして“植物園鳴き出し調査”が初夏にありました。植物園の許可のもと、会員が夜明け前から植物園の数か所でじっと耳をすませ、早朝に鳴いた鳥の記録をしていく調査です。この植物園は昭和33年に東北大学理学部附属植物園としてスタートしましたが、その初代園長が木村有香先生です。先生はヤナギの分類の大家であり、園のヤナギ科コレクションは貴重なものになっています。木村先生といえばもう一つ、キムラグモHeptathela kimuraiの発見者として有名です。これはなんと先生が旧制高校時代に見つけられたもので、とても原始的な特徴を持ち、生きた化石と言われています。先生の奥様がシギやチドリの飛来地として有名な宮城県蒲生干潟の保全に尽力されており、その関係で学生時代に先生のお宅にお邪魔する機会がありました。先生は既に教授職を退官されていましたが、ある日のこと、若い方がヤナギの絵柄の陶器を作って、先生に感想を求めたことがありました。「ヤナギの芽のふわっとした感じがもう少し出ると良いね」とコメントされました。私が学生時代に東北大学植物園を通じて得た体験は、インパクトと共にたくさん記憶に残っています。今でもときおり散策して探鳥や森林浴を楽しんでいますが、こんなすばらしい自然が都市の真ん中にあるなんて、仙台はほんとうに恵まれていますね。

(写真)キビタキ(雄):ヒタキ科の夏鳥で、黒と黄色のコントラストがとてもおしゃれですが、さえずりも綺麗です.東北大学植物園内で撮影.

名 前:冲永 壮治(おきなが しょうじ)

出身地:東京
趣味:介護予防
分野名:老年医学分野(准教授)