◇平成29年9月13日(水)加齢研セミナーのご案内
日時: 平成29年9月13日(水)午後5時~
場所: 加齢研 実験研究棟7階 セミナー室1
演題: ステロイド産生細胞における代謝とAd4BP
講師: 諸橋 憲一郎
所属: 九州大学大学院 医学研究院/システム生命科学府
担当: 本橋 ほづみ(所属 遺伝子発現制御分野・内線8550)
要旨: 最近の我々の研究から、核内受容体型転写因子Ad4BPはほぼ全ての解糖系遺伝子を制御することが明らかになった。しかしながらこの結果は、Ad4BPがステロイドホルモン産生細胞に特異的に発現し、ステロイドホルモン産生に必要な遺伝子群を制御する因子として同定されたことと一見矛盾すると思われた。それは、ハウスキーピングな解糖系遺伝子を組織特異的な転写因子が制御することの合理的な説明が困難であったためであった。
その後の研究から、本因子がコレステロール合成に必要なほぼ全ての遺伝子を直接的、間接的に制御することが明らかになった。加えて、NADPHはコレステロール合成ならびにステロイドホルモン合成に必要であるが、このNADPH産生に関与する遺伝子もAd4BPによって制御されていることも示された。つまり、ステロイドホルモン合成に必要な複数の代謝系がAd4BPによって協調的に制御される可能性が見えてきた。
このようなAd4BPによる代謝系の変動は細胞分化の過程で認められる。精巣のライディッヒ細胞は、前駆細胞から成熟細胞へと分化するにあたって、Ad4BPの発現が上昇する。この時に、ステロイドホルモン産生系を含む種々の代謝系関連遺伝子の発現ならびに酸素消費が同時に上昇しており、Ad4BPによる代謝調節がこれらの細胞の分化と機能の獲得に密接に関わっていることを強く示唆した。
上述のごとく、ステロイドホルモンの産生にあたってはコレステロールが不可欠であり、加えてATPとNADPHも必要である。これらの物質を過不足なく供給するために、複数の代謝系は協調的に作動しなければならない。本研究から、代謝間の協調性を遺伝子発現レベルで具体化するメカニズムが明らかになってきた。

開催案内ポスター