東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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教授リレーブログ
第56回
石岡 千加史
Chikashi ISHIOKA
留学直後の葛藤
もっとひどい失敗は数々ありますが、忘れられない失敗から1つ
 1992年10月、待望の留学生活をボストンで迎えた私は早く研究を進めたいと意気込んでいました。ボスとの最初の面談で、Gal4-ER-VP融合タンパク質によりp53を誘導する発現系をヒト骨肉腫細胞株で確立し、新しいp53がん抑制遺伝子産物の機能探索することになりました。まずは発現ベクター構築からスタート、入手した2つのプラスミドを組み替えるだけの比較的簡単なベクター構築で難なく完了しました。しかし、完成したプラスミドをリン酸カルシウム法で繰り返し細胞に導入し、免疫沈降後のGal4抗体でウェスタンブロットを何度行っても発現が見られませんでした。ボスに2~3度ウェスタンの結果を報告しましたが、報告を重ねる毎に次第にボスの顔が曇るのがわかりました。腕が悪いと思われていないか気が重くなっていたある日、プラスドの構築が間違っているのではないかと不安が脳裏をよぎり、DNAシークエンスをチェックしてみたところ、この不安が的中、発現カセットが逆向に挿入されていました。入手した制限酵素マップが間違っていたために正しい向きのものを選択したつもりが逆向のものを細胞導入していたことが原因でした。この確認に1ヵ月も浪費し、マップを作成した隣のラボのポスドクを恨みましたが、そもそも制限酵素マップを鵜呑みにしていた私のミスでした。このポスドクは私のボスに信頼が厚いとのことで全く疑いませんでした。幸い、これを機会に私のボスに対する信頼は回復しました。当初、私の実力を試すためのトラップではなかったかと疑いましたが、そのポスドクから平謝りされて、その後はまわりのポスドクとも交流が深まり快適に留学生活を送ることができました。留学直後のほろ苦い経験、結果的には良い経験だったと今も時々思い出します。
(1992年から94年に米国ボストンのマサチューセッツ総合病院がんセンターの分子遺伝学教室に留学)
 次回は生体防御学の小笠原先生です。

Profile 名 前:石岡 千加史(いしおか ちかし)
出身地:仙台市
趣 味:温泉、美術館、スキー、サイクリング、ジャズ
分野名:臨床腫瘍学分野(公式HP独自HP
その他:医学部漕艇部(ボート部)部長

  正しい発現ベクターを選択して
  Gal4-ER-VP(GEV)の発現を確認
  (1992年11月の実験ノートから)

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