東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

セミナー

◇平成28年7月27日(水)加齢研セミナ-のご案内
日時: 平成28年7月27日(水)午後5時~午後6時30分
場所: 加齢医学研究所 実験研究棟7階 セミナー室1
演題: 肺生体顕微鏡を用いた呼吸生理・呼吸障害の解析
講師: 田淵 新 博士
所属: 聖ミカエル病院 キーナンリサーチセンター
担当: 堀内 久徳(基礎加齢研究分野・内線8463)
要旨: 生体を生きたまま細胞レベルで観察できる生体顕微鏡によって微小循環の研究は大きく進んできた。しかし、肺では、主に呼吸運動による視野の動揺のため十分に鮮明な画像が得られていなかった。そのような中、我々は肺の生理的な形態を保ちつつ、長時間安定した詳細な観察を可能にする新しいマウス肺生体顕微鏡モデルを確立した(J Appl Biol 104, 338, 2008)。現在、このマウス肺生体顕微鏡は肺生理、病理研究の標準的手法の一つとなっている。我々は本モデルを用いて以下を明らかにした。
1.肺の局所の血液酸素化能を評価し、肺微小循環における詳細な血液酸素飽和度地図を初めて制作した。正常肺では、血液酸素化過程の約50%が毛細血管に流入する前の肺細動脈で完了していた。 肺細動脈における酸素化は、低酸素暴露肺高血圧モデルでは細動脈壁肥厚によって障害されていた(Am J Respir Crit Care Med 188, 474, 2013)。
2.急性呼吸促迫症候群(ARDS)の病態を理解するため、複数のマウス急性肺障害モデルで肺胞の機械的特性(運動)を解析した。急性肺障害初期に肺胞は不均一で多様な運動を呈し、肺胞Pendelluft(隣接肺胞間の空気の往復運動)、肺胞stunning (高度の運動低下)、inverse ventilation (肺胞の奇異性運動)と分類できる異常運動を示すことを見出した。これらの一部は血液酸素化障害と関連し、短いため息(30cmH2O、10秒)によって改善した(Am J Respir Crit Care Med 193, 396, 2016)。
3.正常呼吸では、肺胞は均等に拡張、収縮するのか、完全虚脱と拡張を繰り返す肺胞が存在するのか(cyclic opening and collapse現象)長らく議論の対象となってきたが、我々の観察では、正常呼吸下でcyclic opening and collapse現象を認める肺胞はなかった(Crit Care Med 37:2604, 2009)。病的には、肺胞cyclic opening and collapse現象は、人工呼吸惹起性肺障害の原因の一つと考えらており、我々も溢水肺急性呼吸障害モデルで確認した。しかし、この現象は、特定の吸気プラトー圧と呼気終末陽圧(PEEP)条件でのみ観察され、そのような条件は急性呼吸障害時の人工呼吸では避ける方が望ましいと考えられる。人工呼吸時に高いプラトー圧換気が必要なときは、低いPEEPは避けるほうが良いと考えられ、最近注目されている吸気駆動圧(吸気プラトー圧とPEEPの差 )を低く保つことがARDS患者の予後を改善するという臨床研究に合致するものである。
  このように、我々は、呼吸生理・呼吸障害のメカニズムを明らかにしてきた。本セミナーでは、マウス肺生体顕微鏡モデルおよびそれによって得られた知見を紹介したい。


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