東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

セミナー

  
◇平成26年8月7日(木)加齢研セミナ-のご案内
日時: 平成26年8月7日(木)午後4時~
場所: 加齢研実験研究棟7階 セミナー室1
演題: 放射線に対する医療従事者の理解
講師: 明石 真言
所属: 独立行政法人 放射線医学総合研究所
担当: 福本 学 (病態臓器構築研究分野 )
連絡先:桑原義和  内線 8509
要旨: 放射線の事故が他の事故や災害と異なるのは、その頻度が少ないことである。医療が経験の上に成り立つものであるとすれば、過去の経験は不可欠である。ところが医療従事者のなかで、放射線事故に関わったことのある者はほとんどいないのが現状である。さらに放射線は、線質による相違、単位など分かりにくく、医療従事者であっても放射線への不安が強い。放射線・原子力事故が起きると、健康と環境への影響のみならず心理的もしくは経済的影響が生じる。これは多くの場合が、放射線への正しい理解が乏しいためであり、風評被害さらには差別につながることもある。一方、過去の経験からは、汚染した患者の搬送や治療に当たった医療従事者で、健康影響が出るほどの被ばくを患者から受けた例はない。
2011年3月11日に起きた事故では、汚染に対するスクリーニングレベルが変更された。福島県ではこの事故以前に、放射性物質による汚染のスクリーニングレベルをgとb核種で40 Bq/cm2としていた。これは原子力発電所事故で環境中に放出されると予想される放射性ヨウ素(131I)による汚染と仮定すると、市販の標準的なGMサーベーメータでは、10,000 --13,000 cpm (min-) 前後が検出される汚染である。この事故では住民の頭髪や靴などに、このレベルを超える汚染があったが、避難所では断水のため除染できない、着替えがない、気温が低く脱衣できない等、このままのスクリーニングレベルでは放射線の問題以前に健康面に大きな問題が生じる可能性があったため、何らかの対応が必要となった。国際原子力機関(IAEA)の EPR-First Responders 2006, Manual for First Responders to a Radiological Emergencyによれば、緊急対応という観点から見た場合、除染を必要とするのは、皮膚と衣服の汚染レベルを、10 cm離れたところで1 mSv/時以上としている。完全脱衣し、131I汚染が頭部にのみ残存するとし、その面積が500 cm2と仮定すると、100,000 cpmの汚染が1 mSv/h 位になる。また131I による汚染が100,000 cpm であり、仮に減衰せずに半減期(8.02 日)の間、この線量率が続いた場合、ICRU Report 56により皮膚線量を計算すると、積算線量は約90 mSv となる。実際には半減期もあり、また代謝により自然に除染されることを考えると、皮膚への影響も十分低い。この事故では、1mSv/hの防護衣の汚染や、10 mSv/hを超える皮膚汚染例もみられたが、除染した医療従事者の被ばくは 1 mSv以下であった。しかしながら、当初は様々な理由から避難民や汚染患者を受け入れる医療機関が福島県内になく、これまで行われてきた医療従事者に対する被ばく医療に関する教育で、「汚染より、救命を優先する」という医療の原則が浸透していないことが明らかとなった。

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