東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

研究活動

基礎加齢研究分野

教授 医博 堀内 久徳
助教 医博 白川 龍太郎
特命助教   木村 朋寛
基礎加齢研究分野のホームページへ


研究室の紹介

低分子量GTP結合蛋白質を中心に、細胞内情報伝達メカニズムの研究を行っています。生化学的なアプローチによる新規因子の同定を得意としており、いくつかの因子を同定しています。現在は私達が世界に先駆けて同定したRalGAPの生理的・病態生理的解析を集中的に進めながら、生理機能が未解明の低分子量GTP結合蛋白質の研究も進めております。

最近、自然免疫に重要な役割を果たす好中球は活性化に際し、自らのクロマチンを細胞外に放出し、細菌をトラップして生体防御に寄与していることが明らかとなりました。この放出されたものはneutrophil extracellular trap (NET)と、そのプロセスはNETosisと名付けられています。その後NETは、生体防御だけでなく、血栓形成、癌転移、さらに自己免疫疾患の発症に重要な働きをしていることが次々に報告されています。しかしながら、NETosisの分子メカニズムに付いては余り多くのことは知られていません。私たちの研究室では新たなプロジェクトとして、このNETosisの分子メカニズムの解明を開始しました。

一緒に研究を進めてくれるポスドク、大学院生を募集中です。

月曜日の19:00-21:00に研究室で「寺子屋」勉強会を開催しています。基礎的な分子細胞生物学と臨床的な「疾患のつかみ」を低学年用に、医学部高学年用に症例検討を交互に講義しています。詳しくは私達の研究室のホームページをご覧下さい。興味のある学生(学部・大学院)さんには参加大歓迎であり、新しく参加希望の学生さんはご連絡ください。医学部以外の方も大歓迎です。


現在の研究内容

 低分子量GTP結合蛋白質は、結合するグアニンヌクレオチドによってその立体構造を変える。GDP結合型が不活性型、GTP結合型が活性型であり、活性型がその「エフェクター」分子と直接結合することによってシグナルを下流に伝える。活性化反応はGEF(Guanine nucleotide exchange factor)によって、不活性化反応はGAP(GTPase activationg protein)によって担われている(図1)。
 低分子量GTP結合蛋白質のひとつRalは、Rasファミリーに属するGTP結合蛋白質である。Ralは小胞の形質膜への繋留因子であるexocyst複合体を介して血小板濃染顆粒放出やインスリン刺激時の脂肪細胞におけるGLUT4糖輸送担体含有小胞の形質膜上への移動を制御する(図2)。また、RalBP-1を介してエンドサイトーシスを制御し、さらに癌遺伝子Rasの下流で癌化、癌転移に深く関わっている。Ralは、RalAとRalBから構成される。RalAは細胞の癌細胞の足場非依存性増殖に重要であり、RalBはIkBキナーゼであるTBK1を介して、cell survivalに必須であることが示されている。このように、Ralは、種々の重要な細胞機能を制御している。 
 Ralの抑制性活性制御因子であるRal GAPは、ほとんどの主要なRasファミリーGTP結合蛋白質の中では唯一未同定であったが、最近、我々は世界に先駆けてRal GAPの同定に成功した(図3)(Shirakawa et al, JBC, 2009)。Ral GAPはαサブユニット(活性サブユニット)とβサブユニットの複合体であり、哺乳類では活性サブユニットは2つ(α1及びα2)存在していた。我々はRal GAP1 (α1-β複合体)とRal GAP2 (α2-β複合体)と名付けた。α1及びα2サブユニットは、ubiquitousに発現するが概して相補的であり、脳ではα1サブユニットが、肺、肝、膀胱等では、α2サブユニットが圧倒的に優位に発現していた。現在、研究室ではRal GAP自身の制御機構を明らかにし、そして、がん、発生、炎症等におけるRalおよびRalGAPの役割を解明することを目標として研究を進めている。
 最近、膀胱癌でその悪性化とともにRalGAPα2サブユニットの発現が低下し、低下した膀胱癌の症例では予後が不良なこと、RalGAPα2サブユニットを発現させた膀胱癌細胞はマウス肺転移モデルで肺転移が強く抑制されること、RalGAPα2-KOマウスに化学膀胱発癌を誘導すると野生型では見られなかった浸潤性の膀胱癌が多発することを報告した(Oncogene, 2013)。

 NETosis分子メカニズムの解明に取り組んでいる。いくつかの成果が上がっており、学会・論文発表を目標に研究を進めている。

図1
 図1
図1
 図2
図1
 図3

主な発表論文(*: corresponding author)
  1. R. Shirakawa, H. Horiuchi (2015) Ral GTPases: crucial mediators of exocytosis and tumorigensis. (a review) J Biochem (Tokyo) in press
  2. N. Yaoita, R. Shirakawa, Y. Fukumoto, K. Sugimura, S. Miyata, Y. Miura, K. Nochioka, M. Miura, S. Tatebe, T. Aoki, S. Yamamoto, K. Satoh, T. Kimura, H. Shimokawa, H. Horiuchi (2014) Platelets are highly activated in patients of chronic thromboembolic pulmonary hypertension (CTEPH) Arteriosclerosis Thromb Vasc Biol, 34, 2486-2494
  3. T. Kimura, R. Shirakawa, N. Yaoita, T. Hayashi, K. Nagano, H. Horiuchi (2014) The antimalarial drugs chloroquine and primaquine inhibit pyridoxal kinase, an essential enzyme for vitamin B6 production. FEBS Letter 588:3673-3676
  4. Q. Chen, C. Quan, B. Xie, L. Chen, S. Zhou, R. Toth, DG Campbell, S. Lu, R. Shirakawa, H. Horiuchi, C. Li, Z. Yang, C. MacKintosh, H-Y Wang, S. Chen (2014) GARNL1, a major RalGAP alpha subunit in skeletal muscle, regulates insulin-stimulated RalA activation and GLUT4 trafficking via interaction with 14-3-3 proteins. Cell Signal 26, 1636-1648.
  5. R Saito, R Shirakawa, H Nishiyama, T Kobayashi, M Kawato, T Kanno, K Nishizawa, Y Matsui, T Ohbayashi, M Horiguchi, T Nakamura, T Ikeda, K Yamane, E Nakayama, E Nakamura, Y Toda, T Kimura, T Kita, O Ogawa, H Horiuchi (2013) Downregulation of Ral GTPase-activating protein causes tumor invasion and metastasis of bladder cancer. Oncogene 32, 894-902
  6. K Boswell, D James, J Esquibel, S Bruinsma, R Shirakawa, H Horiuchi, T Martin (2012) Munc13-4 reconstitutes Ca2+-dependent SNARE-mediated membrane fusion. J Cell Biol 197, 301-312
  7. Yamane, T. Ikeda, R. Taniguchi, S. Watanabe, M. Kawato, H. Kondo, R. Shirakawa, T. Higashi, M. Toma, T. Tamura, A. Tabuchi, K. Takahashi, H. Watanabe, Y. Yoshikawa, T. Kita, T. Kimura, H. Horiuchi (2012) The impact of platelet reactivity on long-term clinical outcomes and bleeding complications in Japanese patients receiving antiplatelet therapy with aspirin. J Atherosclerosis Thombosis 19, 1142-1153.
  8. Y. Murata, T. Yasumi, R. Shirakawa, K. Izawa, H. Sakai, J. Abe, N. Tanaka, T. Kawai, K. Oshima, M. Saito, R. Nishikomori, O. Ohara, E. Ishii, T. Nakahata, H. Horiuchi, T. Heike (2011) Rapid diagnosis of familial hemophagocytic lymphohistiocytosis type 3 (FHL3) by flow cytometric detection of intraplatelet Munc13-4 protein. Blood 118, 1225-1230
  9. Higashi, T. Ikeda, T. Murakami, R. Shirakawa, M. Kawato, K. Okawa, M. Furuse, T. Kimura, T. Kita, H. Horiuchi (2010) Flightless-I (Fli-I) regulates the actin assembly activity of Diaphanous-related formins (DRFs), Daam1 and mDia1, in cooperation with active Rho GTPase. J Biol Chem 285, 16231-16238
  10. R. Shirakawa, S. Fukai, M. Kawato, T. Higashi, H. Kondo, T. Ikeda, E. Nakayama, K. Okawa, O. Nureki, T. Kimura, T. Kita, H. Horiuchi (2009) Tuberous sclerosis tumor suppressor complex-like complexes act as GTPase activating proteins for Ral GTPases. J Biol Chem 284, 21580-21588

ページトップへ ↑