東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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心臓は動いていないと正常に発生しないわけ -細胞はどのように力を感じるのか?-


心臓は、発生のごく初期から拍動し始め、生涯、血流を維持し続けます。そして、血流は、心臓の内側を作る心内膜細胞や血管内皮細胞に、せん断応力と呼ばれる力刺激を加えています。そして、この力刺激は胎児期に心臓発生を進める原動力となっています。血管狭窄や血流の増減によって、せん断応力は成体でも常に変化し、それに適応して恒常性を維持しています。しかし、せん断応力などの力刺激が、どのように生命の維持に寄与しているのか、ほとんど知られていません。この問題は、様々な先天性心疾患や代謝循環器疾患(動脈硬化、動脈瘤、血栓症など)の発症機構の理解に繋がり、医学的に重要な意義を持っています。本研究で我々は、血流が miR-21 という小さな RNA 分子の発現を起こして心臓の弁形成を進行させることを見つけ、力刺激がどのように遺伝子発現を調節するか、その一端を解明しました。今後さらに、細胞が力を感知する仕組みを解き明かすことで、前述した疾患の理解を深めることができます。無重力下の宇宙飛行士や寝たきり老人に見られる骨萎縮には、重力という力が重要な働きをもっていますし、運動による力刺激は肥満や糖尿病などの代謝疾患を改善することができます。このように、細胞が力をどのように感知し、反応するかを解明することは、運動などの力刺激と同じ作用を示す新しい薬剤(運動模倣薬 Exercise mimetics、あるいは exercise pill)をデザインすることにもつながり、今回の報告は、その先駆けとなります。

発表論文
Nature Communications誌

発表論文名
Haemodynamically dependent valvulogenesis of zebrafish heart is mediated by flow-dependent expression of miR-21.

著者名
Toshihiro Banjo, Janin Grajcarek, Daisuke Yoshino, Hideto Osada, Kota Y. Miyasaka, Yasuyuki S. Kida, Yosuke Ueki, Kazuaki Nagayama, Koichi Kawakami, Takeo Matsumoto, Masaaki Sato, Toshihiko Ogura,
(筆頭著者 生命科学研究科博士課程後期 日本学術振興会特別研究員DC1 番匠 俊博)

図の説明:
熱帯魚の一種、ゼブラフィッシュの心臓で、房室弁と大動脈弁に強く発現する miR-21。この発現は、血流を止めると消え、再開させると速やかに回復する。

2013年06月12日 掲載